『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』が自分の周りで予想外に不評だった件

・ただの俺TUEEEEじゃないの?という感想

先日集まって飲んだ時、今アニメを絶賛放映中の『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』が予想に反してかなり不評だった。

理由としては、主人公がチートすぎるので、どこにカタルシスを見たらいいか分からない、というのが大半だったように思う。

ただ、私としてはこの評価はとても不思議だった。確かに強いことは強いのだが、以前に感想を書いた通り、この話の力点はそこにはおかれていなかったはずだ、と思ったからだ。

どうも不評だったのはアニメ勢からだったので、その辺に原因を考えてみたい。


・アニメは非常にすっきりしており、分かりやすいが……

最近の分は未試聴だが、4話程度まではアニメ版を見ている。少なくともこの範囲に限定するなら、とてもよくできているように感じた。小説よりもだいぶ話が分かりやすいからだ。小説を読んだ身としては、この分かりづらい部分がすっきりしたことで、おおよその欠点は解消できたように感じたほどだ。

しかしアニメ勢は、単にチートしているだけだという。ペルセウス戦も全く手こずらなかったし、どうも「そういう話」なんじゃないかと思ったらしい。

私自身は1巻を読んだ時から、説明は分かりづらいが、この話は「ゲーム」をやりたいんだ、という点を評価していたので、その要素が軽んじられているのが納得いかなかった。どうしてそういう風に受け取ってしまうのかと。

ただそれだけアニメ勢が俺TUEEEにフォーカスしていることを考えると、アニメから入るとそういう風に見えるかもしれない、という思いも出てきた。


・ギアスロールの扱いに差

そこで差を考えると、どうもギアスロールの扱いが大きく違うように見える。

小説ではフォントも変えて、いかにも契約書という言葉づかいを用いて、フォーマットを整えている。これが一つ、内容はともかくとして「ゲームらしさ」の演出に一役買っているのは間違いない。

ところが一方で、アニメ版では紙として手に取りはするものの、内容については口頭で聞くのみである。

そのため小説では、ルールを設定しゲームで戦う、という部分が強調されているのに対し、アニメではストーリーの一部としてギアスロールというものがあるらしい、という位置づけになっているのではないか。

確かに、1巻では謎を紐解いていく面白味は薄く、どちらかというとドンパチやって戦うバトルとしてのエンターテイメントが強い。

この点が、ギアスロールを軽く扱うことによって、面白味の順番に逆転が生じて、「ゲームの中では、割と腕力中心」というような感想から「バトルする中に、少しゲームの要素がある」という評価に変わったのではないかと思われる。

後者のように感じてしまえば、面白味が感じられない、という感想もある程度理解できる。

またその場合、面白くないと感じる理由はまだある。

バトルが主軸であるとみなしてしまうと、十六夜だけが突出して強すぎるのだ。他の二人の存在意義がないほどだろう。

そのためこの小説の魅力の一つである、「それぞれのキャラが、あくまで対等な相手として友情を築こうとすること」というのがどうにも滑稽に見えてしまいかねない。バトル面で見れば決して対等ではないからだ。例えば十六夜がフォレス・ガロとのゲームに参加しない辺りが、そのためのスタンスであると見えづらい。


単純に俺TUEEEEだけが問題ではないのだ。どんな物語にも、多かれ少なかれそういう要素はあるので、それが理由とはなりえない。その要素を物語としてどう両立させるか、という点が腕の見せ所だとすれば、確かにこの話の面白さを損なっている可能性はあるのかもしれない。

私は小説を先に読んでいたため、先入観があったからそうは見えなかった(もしかしたら、小説を読んでもそう思う人もいるのかもしれないが…)とすると、改めてアニメ化の難しさを感じる。

そう考えると、この点に留意して、アニメから入って、ラノベを読んでみたときの感想を聞いてみたいものだと思う。