デート・ア・ライブ 味付けで勝負

デート・ア・ライブ 十香デッドエンド (富士見ファンタジア文庫)

デート・ア・ライブ 十香デッドエンド (富士見ファンタジア文庫)

・テンプレートに一味加えて

後書きから抜粋すると、着想は「秘密組織のメンバーがみんなでギャルゲーとか一生懸命やってるのってなんかシュールじゃね?」らしいです。

キャラクターと大筋は清清しいくらいテンプレートに乗っており、そこで勝負する気はあんまりなさそうで、本当にアイデア一発勝負です。潔い。

出現するだけで一都市を吹き飛ばし、いるだけで世界を滅ぼしかねない「精霊」。しかし彼らはあまりに強力で倒すことができない。それでも殺そうとしつつ、なんとか対話による和解を試みる。

そんなスタートの設定だけで見ると超絶シリアスな話になりそうなのに、途中でギャルゲーが出てきて重い空気を全部ぶっ飛ばす辺りが確かにシュール。

個人的にはどうしてこうなった感が強いのですが、このコメディ感が楽しめるならアリでしょうか。


・すごいミスマッチに感じるが……

主人公の動機がまた実にシリアスで、己が周り(世界)から拒絶されて絶望した過去を持っているため、絶望している奴を見ると放っておけない、というもの。

それがまあ超絶さらっと流されて、しかも「精霊」の説得に際し、女の子に接するのが慣れてないからギャルゲーで特訓って。

なんかこう安心感のあるテンポなんですが、シリアスな空気が全然持たない。

基本的に人間の悪意というか、欲望に忠実なところというのは出てこなくて、きれいな話です。

エンタメとしては、なんだかんだ主人公がヒロインと信頼を築いていって、なんだかんだ救っちゃう点。前述の通り非常にシンプルです。

もうちょっとバカバカしい目的に対する話だとこの空気も分かりやすいんですけどね。『ベン・トー』とか。その意味では、バカバカしい目的を全力で熱く書いた『ベントー』なんかとは正反対に位置すると言えそうです。

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蒼穹のカルマ』からそうだと思いますが、基本的にこの人の作品って話自体は普通で後の「味付けで勝負」ってことだと思うんですよね。カルマで言えば主人公がスーパーシスコンなことで、今回はギャルゲーという所でしょうか。

その辺の新規性を気に入るかどうかがポイントだと思います。