我が家のお稲荷さま。  不思議な雰囲気

我が家のお稲荷さま。 (電撃文庫)

我が家のお稲荷さま。 (電撃文庫)

・古き良き電撃の佳作

ひょんなことからお稲荷様がうちにやってきて無双したりまったり日常したりするドタバタコメディ。

2004年というから、もう9年近くは前の作品らしい。確かに、今だったら丸められてそうな要素が随所に残っていて楽しいし、ラブにもハーレムにも傾かないほのぼのした雰囲気も心地よい。

お稲荷様が男にも女にも化ける、といういかにもそれっぽい設定があるかと思いきや、性格がやたら豪快だったり容赦なかったりする所といい、化ける力が弱まると獣顔に戻ってしまう所といい、なんとなくバランス感覚がある。

男女比のバランスの取り方もラノベらしくない…というと語弊があるかもしれないが、ごく自然に周りにいる人を描いたようで、違和感がないことに違和感がある。

この辺一夫多妻制がデフォのラノベ業界が他と比べると特殊なように思えるし、一度なぜそうなったか考えてみるのも面白そうだ。

内容についても一本別のテーマがあるため、特にジャンル分けにこだわることもなく、自由に横断して要素を取り入れているように見える。その意味では、エンターテイメントとしてあいまいなカラーにするためには、一つ描きたいテーマがあるのが条件として考えられる。

なにぶん劇的な話でもないし、派手さはないが、最近こういった話はあまり見かけないので、一度読んでみるといろいろ比較ができて面白いかもしれない。もちろん内容としても面白い。