僕と彼女のゲーム戦争3

・ハーレム+リアルなゲーム描写

単に美少女のゲーマー達とイチャイチャしながらゲームをする話……と思うかもしれないが、ベテランの方らしく設定がとても巧いので、上質なエンターテイメントに仕上がっている。

やはり秀逸なのは真に迫るゲーム描写。名前をもじることすらなく実在のゲームを出してくるだけあって、戦略や「あるある」までかゆい所に手が届く。作者の方の溢れんばかりのゲーム愛を感じる。

結構なゲーマーでないと本作に登場する作品を全て網羅するのは困難だと思うが、未プレイどころか名前を知らなくても楽しめる仕様になっている。

ストーリーとしては王道なのだが、これだけ飛び道具的な題材を使っているのにうまいこと王道に落とし込んでいる所が、逆にすごい。

また、お約束らしくかなりハーレム要素が強い。メインヒロインだと思っていた天道の影が薄くなるレベルである。

表紙がどんどんエロくなっているのはご愛嬌。イラストの方がエロゲ業界の人なので、本領発揮と言うところかもしれない。ただそれが購買層を狭めやしないかと少し心配でもあるので、そこまで気にすることはない、と改めて言っておきたい。


・設定だけでだいたい勝ってる

先述したとおり、本作は設定がとにかく素晴らしい。

まず文化の活性化を狙って国が配布した、本やゲーム、映画?などに使える「文化振興券」によって、ゲームは大きく利益を享受し、より一般的な文化になった、とする世界観が巧い。

単にゲームが流行る、と設定するには昨今の事情を考えるとかなり無理がある。ソーシャルゲームならいざ知らず、家庭用ゲームはなかなか一般層には浸透していないのが実情であるのに、突然ゲームが流行りました、というのは難しい。

その点、仮にゲームが流行るとするなら?を考えると、この「If」はかなり有効だと思う。それに、そのくらいの設定でないと、美少女に囲まれながらゲームなんていう状況はそうそうリアリティを保持できそうにない。


次に、この設定からあらゆるゲームを使って競う大会が存在するようになり、これに勝つという目標を据えることで、部活動ものとしてメリハリが利くようになっている点もいい。

格ゲーのガチ勢など、ひとつの競技として認識されるようなゲームをやっているなら話は別だろうが、通常の人にとってはだいたいが交流のツールや、個人の娯楽としての趣味と言った位置づけではないかと思う。

しかしそれでは、物語として成立させるには4コマ系のゆるい日常系に持っていくしかないが、ゲームを扱ってその手のタイプにするとさすがに間口が狭すぎる。その点、大会という明確な目標があれば、いわゆる「努力・友情・勝利」に代表されるようなわかりやすいエンターテイメントを取り入れることができる。

また大会に向けて準備をしたり、実際に大会で扱うことで、様々なゲームに触れることになるというメリットもある。これにより様々なゲームについて知る楽しみがあるし、大会の攻略ということで、勝とうとした際に考えることや起こることなども含めて楽しめる。


加えて、集中するとゲームに没入してゲーム内の主人公と同化してしまう、という主人公(紛らわしいが、こっちは本作の方)の能力によって、ゲームの盛り上がりをメタ的に感じながらも、まるでひとつのドラマのように見ることができる。

これはゲームを楽しむひとつの処方箋であると同時に、インターフェースを取り払ってゲームの展開を直接描写できるという一石二鳥の策に思える。

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発想の勝利と言いたいのですが、実際にこれを書くためにかかる苦労を考えると、やはり並大抵のものではないような……。

ハーレム要素が若干爆弾くさいのが気になりますが、引き続き読んでいきたいシリーズです。<評価>
ハーレム(受動系)★★★
無双系★★★
テーマ性★★★☆