ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー 良質なひねくれたボーイ・ミーツ・ガール

ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー (電撃文庫)

ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー (電撃文庫)

・奪え!全て、この手で!

Q.奪われないためには、どうしたらいいか?

A.奪われる前に奪う。

この問いに対し、迷いなくこの答えを返すのが本作の主人公です。こういうがっついた主人公と言うのは昨今珍しいかもしれませんが、私は大好きなので歓迎です。もっと増えて欲しいです。

そのやさぐれっぷりは、開始数ページでヒロインのいる屋敷に強盗目的で忍び込んで捕まるほど。いや馬鹿にしているわけではないんですが。

世界観などの設定は多少複雑ですが、話はシンプルです。

奪われる前に奪うばかりの生活だった主人公が、奪うばかりではいつか結局奪われることになる、と考える少女と出会う。

彼らは分かり合えるのか?死なないなら何でもありの競技、ウィザーズ&ウォーリアー・ウィズ・マネーで勝ち残ることはできるのか?

この辺の各キャラの信念が、うまくバトルとリンクしていて熱い展開になっていると思います。オススメ。


・奪われる前に奪えばいいのか

個人的な感覚で言えば比較的珍しいと思うのですが、この話はラノベながら主人公が成長します。

ここにはかなり真っ当なテーマ性があるので、一言で表すのは難しいですが、あえて挑戦するなら「強者の倫理」ということでしょうか。

奪われる前に奪う、というのは強者の理論です。しかしそれで万事立ち回るのは様々な意味で難しい。

ならばどうするか?といったテーマをこの話では扱っています。

私はテーマの扱いは程度問題だと思っていますが、この話に関してはテーマよりストーリーが前面に出てきているので、一緒に成長すればそれでよし、そうでなくても一本の話として楽しめる出来になっていると思います。

こういう現実で生活していくうえで、明確に答えの出せないテーマを扱うのは、読者によって問題提起にも、考え方の提示にもなり得るので、とても有効だと思います。

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シンプルで熱い展開ながら、良質なテーマ性も持つ良作だと思います。

汚い主人公が平気ならおすすめです。