東京レイヴンズ7 中心にあるのにかみ合わない歯車
東京レイヴンズ7_DARKNESS_EMERGE_ (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: あざの耕平,すみ兵
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2012/05/19
- メディア: 文庫
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・遠大すぎる全体像
6巻ぐらいから俄然面白くなってきました。評判どおりといえばそうなんですが、友人にそう言われてなければ1巻の時点でやめていたことを考えると、なにか間違っている気がしてなりません。ダイバーシティといってよいのやら。
切り取り方に問題があるような気がするんですよね……だってこれウルトラマンとかで言えば、主人公のウルトラマンが変身して戦う前に人間の状態でチンピラに絡まれて、それを片付けてる間に飛行機に乗った大人たちが超格好良く怪獣を撃退しているようなもんじゃないですか。
いや確かに主人公たちを中心にして出来事が回っているんですが、主人公たちが全く歯車として機能してないんですよ。7巻でようやく歯車の形が整いました、くらいです。
だから面白いのは確かなんですが、それは周りで活躍する「大人たち」が格好良くて面白いのであって、主人公たちは基本的に蚊帳の外という不思議なことになっています。
うまく説明できないのがもどかしいんですが、ものすごい違和感があります。例えばですが、『ダイの大冒険』とかと比較すると私の言いたいことが伝わるのではないかと思います。主人公が成長する少年漫画ならなんでもよさそうですが、1〜2巻の流れがかなり通じるところがあるので。
・ある意味現実的かもしれないが……
『ダイの大冒険』では、物語の出だしにおいて主人公のダイはまだまだ未熟で、アバンという師について修行することになります。アバンは旅をしながら、将来魔王に対抗できる勇者を育成しているのです。この修行の間はダイの故郷である絶海の孤島で修行しているため、外の世界のことはほとんど話題に上りません。ひたすらダイが修行して強くなることに焦点が置かれています。外の世界では魔王が復活し、世界が闇に包まれようとしていることはほのめかされつつも、焦点が当たりません。
しかし師匠の常として、アバンは魔王に惜敗し死んでしまいます(まあ、この時点では)。生き残った魔王を、ダイは特殊な能力に目覚めなんとか撃退しますが、まだまだ力が足りません。そこでアバンを倒すほどの敵に打ち勝つため、主人公のダイは世界に旅に出ることになります。ここでようやく、ダイは魔王とその一派に敵対することになるわけです。ここからはダイと魔王軍との戦いを中心に語られますから、やはり中心はダイです。
この修行→師匠の死闘と死(まあ大友は死んでないけど)→主人公の覚醒という流れ、レイヴンズにそっくりですよね。まあ普遍的に見られるプロットだとは思いますが……
しかしこのダイの大冒険にレイヴンズの状態を当てはめると、出だしにおいてダイの修行をそこそこに描いているけど、他の国でアバンの仲間が、アバンを倒しに行こうとする魔王軍を止めるシーンを超熱く描いているようなものではないでしょうか。面白いんだけど、そこじゃない!と。
確かにダイみたいに、修行して強くなるまで(まあアバンと別離した時点ではまるでよわっちいんですが…)都合よく魔王軍の目を避けていられる方が稀で、現実的にはよわい主人公を置いてきぼりにして、周りが頑張らなければならないのかもしれませんが……。
・主人公を中心に描かないと疎外感に襲われる
この二つの差は、要するに切り取り方の問題だと思います。3人称小説では確かに裏での陰謀や状況の説明が入るのは珍しくないんですが、そっちがメインになると主人公に感情移入している読者は置いてきぼりにされるんですよね。群像劇の形態を取っていればいいのでしょうけど、1巻の始まりからして、春虎たちにフォーカスせざるを得ません。
2巻以降、明らかに話の主軸が裏でうごめく陰謀になっているにもかかわらず、その表面化したほんの一部にしか主人公たちは関わることができません。
ようするにそれって、現実のことですよね。現実における、マクロにほとんど影響力を持つことのできない我々一般人(でなかったらすいません)の境遇です。
そういえば『薔薇のマリア』というシリーズがあると思うんですが、私の読んだ範囲ではあれも主人公の周りの人間が異常に強くて、ほとんど主人公役に立たない話でした。そりゃそっちのが当然現実的だけれども、物語でまでそんな卑屈な切り取り方しなくてもなあ。
物語の中でくらい主人公が中心であって欲しい、というかそういう風に絵を切り取って欲しいという願望が読者にはあると思うんです。少なくとも私にはあります。一主人公が中心である話が圧倒的多数である以上、基本的に一般化してよいと思っていますし。というか中心じゃなかったら主人公って言わないんじゃ……
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だから、起こっている出来事としてはめちゃくちゃ面白いけど、もったいない、というかなんか違う!という感覚に襲われる不思議なシリーズです。
まあこれも、7巻でなんか主人公が戦力になりそうな兆しがあったので、ようやく解消されるかも?と思うと楽しみでもあります。
私のように最初からそうと知っておけばそれなりに覚悟して読めるので、そうすることをオススメします。