も女会の不適切な日常1 そんな馬鹿な

も女会の不適切な日常1 (ファミ通文庫)

も女会の不適切な日常1 (ファミ通文庫)

※2節目以降ネタバレ・ただしネタバレなしで読むことを推奨

・気になるなら損はしない

何も情報を入れたくない。

検索で表示される数行は、できる限り当たり障りのないことを書いておきたい。実際のところはこういう思わせぶりな書き方がむしろ詮索の元になることは分かっているのだけど。

ならばいっそ取り上げなければいいのだが、そうするとこの驚きを伝える手段を失ってしまうし、紹介する機会を逸することが本意であるとも思えない。

こういう流れを見て気になった人こそ読んでみたらいい作品だと思う。

そう考えると、改めてやはり大手の方の紹介は巧みであると感じる。
も女会の不適切な日常1 ――まいじゃー推進委員会!

ただし、評価を★★★にしたことを考慮に入れてもらってもいいかもしれない。理由は後述する。



・意表を突く事を狙った構成

いつもよりスペースを取ったことだし、ネタバレして本書について考えていきたい。

出だしはある意味想定どおり、表紙、あらすじ、扉絵全ての印象を裏切らないただのゆるい日常描写から始まる。この手の作品が好きでなければ退屈さすら覚えかねない描写がしばらく続くのに、突然ひどい形であっけなく崩れ去る。

ここでギャップをつけていきなり過酷な展開に持っていくのだが、この狙いは何か。

単純にサプライズを狙ったのだろうか。しかしもし仮に何の評判も聞かずに読み始めたのなら、単純に過酷にするだけでは日常系を期待した人は、「裏切られた」感覚の方が強いのではないか。それではただのマイナスになってしまう。

あらかじめこういう、評判という形で広がって読まれることを想定しているとも考えないではないが、やはり日常系として手に取った人を狙った何かがあると見る方が無難だろう。

私はそれは、日常を叩き壊すことによる日常系への告発であるように感じた。慣れ親しんだユルい空間を一旦は見せておきながら、突然壊すことでそれが本来は日常「ではない」ことを強調している。またその根底に当然のようにある信頼がいかに信用できないかという部分を、あっけなく裏切って殺される第二部(と、便宜上呼ぶ)で描き出す。そうしてバラバラに崩壊した後浮かび上がるのが「不適切」な日常という意味ではないか。主人公がラストで感じる違和感はそれを代表しているように思える。

ゆえに本編で告発したからには、リアリティの薄い「日常」を崩した上で「俺があるべき(日常)生活や信頼を描き出してみせる」ということになるのではないか……と思う。


・売り方が惜しい

この小説に関して、残念な点がある。

それは、一冊で完結しない挙句に、ついているのが番号の「1」な点だ。

1であるということは、仮に人気が出れば、伏線を引っ張ったまま延々と続く可能性がある。最後に日常に回帰してしまった以上、これ以降は事件を小出しにしていくことが可能になってしまう。名探偵コナンのようなものだ。名探偵コナンについては、あのテンプレートを作ること自体が目的だったので、ここで例に出されるのは筋違いかもしれないが……

2巻が未読なため、杞憂である場合はひどい言いがかりになるのだが、そういう懸念を抱かせられること自体が残念である。

確かに終わりの見えない展開で①とナンバリングされるものは数限りなくあるのだが、本作に関してはアイの話があまりに不完全燃焼過ぎる。この展開で下巻へというならまだしも、関係ない展開が来たら耐えられない。

やること自体は別にいっこう構わないとしても、これはかなり供給側の都合が強く反映されているように思う。しかも惜しい部分が物語の内容に関係ないところがまたやるせない。

そういう意味で、単品ではこのような評価にならざるを得なかった。

                                                    • -

<評価>
ハーレム(受動系)★★★
日常系★★☆
ミステリ★★★