鬼哭街

続けざまにニトロゲーをプレイ。虚淵シナリオに魅せられてしまって…

舞台は近未来の上海。かつては組織・青雲幇に所属し暗躍していたが、信じていた仲間に裏切られ死の淵をさまよい、最愛の妹も陵辱された挙句に殺された。そんな絶望の底に叩き込まれた孔濤羅(コン・タオロー)は、頼りない一縷の望みにすがって、青雲幇への復讐を決意する…

という、出だしは非常にシンプルな復讐劇の様相。

そもそも選択肢がまったくないという、ゲームではなくサウンド付きビジュアルノベルとでも言うべき代物ですが、その分一本道を一気に駆け抜けていくように楽しめました。

そもそも選択肢式の平行世界というのがいまだに慣れないので、こういう構造のほうが個人的には楽というのはどうなんだろう…。

こちらもシナリオとしては短く、5時間もあれば終わる長さ。

息もつかせぬアクションシーンに、伏線の張り方といい、話のひっくり返し方や、ラストのもって行き方、どれも流石の上手さだと思います。DL販売1800円程度と値段もリーズナブルですし、おすすめです。

以下ネタバレ反転表示。

やはりこのシナリオが通常の復讐劇と違うのは、

1.悪いのはコン・タオロー自身、と糾弾される点

2.手引きされた復讐であること。

どちらも割と良くあるといえばそれまでなんですが、まぁ一応。順番に見ていこうと思います。

1.悪いのはコン・タオロー自身、と糾弾される点

死の間際までコン・タオローは、最愛の妹ルイリー(あくまで兄妹愛だが…)を信じていたリュウ達に陵辱されて殺されたと思っていた。

しかし実はルイリーはコン・タオローのことを愛していて、それにタオロー自身が気づかなかった(気づこうとしなかった)がためにルイリーはリュウに嫁ぐも精神を病んでいっていたことがリュウから語られる。

リュウはルイリーを愛していたが、ルイリーの絶望への渇望を見て、自身も絶望しルイリーを陵辱し輪姦したのだが、ルイリーはその間ずっと笑っていたという。

この笑って輪姦されているルイリーの一枚絵が、ある意味このゲーム一番の衝撃というか…。

しかもその笑っているのが、壊れちゃったとかじゃなくて、自分の身に降りかかる苦痛と絶望がうれしくて笑ってる、というのが極めつけ…。

なんというか、まぁ確かに気づかなかったコン・タオローは悪いんだけど、自分の気持ちを告げなかったルイリーに、気づいていながら解決に動けなかったリュウも同罪なのでは…。

とすさまじくやるせない気持ちになって虚無感満載で終わるのかと思いきや、まさかのエンド。ああ、ちゃんと救われた…個人的にはすごいハッピーエンドで、読後感も爽やかでした。

しかしながら、コン・タオローが、徐々に自我を取り戻していくルイリーを見ながら、「俺は妹のことを何にも分かってないんじゃないか…?今までなにを見てきたって言うんだ…」なんてことをいう場面には考えさせられたり。

やっぱ分かりあえないのが基本だよな…というのは肝に銘じておかないと。そういう意味ではすごい毒ですね、これ。

コン・タオローの気持ちが伝わるのなんて、もう死ぬ寸前のぼろきれのようになった後…けど、それくらい伝わらないものかもしれないなぁ、なんて。

2.手引きされた復讐であること。

この復讐劇、最初からリュウが全部動かしてた話だったんですよね。組織の動き方のぎこちなさも、わざとタオローに撃破させるためだったし、40%のルイリーに接触しても何もしなかった。

なんでそんなことしたのかというと…20%に薄まってもいいからルイリーと一緒にいたかった、というのが1点あったようで、後はルイリーの魂の変質を望んだ、というのがあるのかな?

ルイリーでありながら魂が変質すれば、あるいは…という、薄い望み。しかしそれに望みをかけるまでもなく、もうとっくに絶望して死のうとしてるよなぁ…虚無だ、って何度も言われてるし。後者はなんとなくそんな気がする、程度の話です。

なんにせよ、脊髄反射でこの話が書ける虚淵さんはすごい人だと思います笑。