沙耶の唄
とりあえず向こうで取り上げた奴を持ってきました。少しどころじゃなく書き直しましたがご了承ください、というか多分誰も同じ人は見てないので心配ないですね。
作品に入ります。
ニトロプラスの虚淵シナリオというだけでもう名作の予感ですし、実際に傑作と騒がれていますが、噂にたがわぬ、期待に背かぬ作品だと思います。
尺は短めで多分全部で4、5時間くらいですが、その間中戦慄することしきりでした。
グロいグロいとは聞いていましたが、確かにそりゃぼかし機能もつくよな…と。
それでいて内容は恋愛でもさらに純愛とも言えそうなのだから、なんというか売り方を間違えたような…や、結果としてはそれが独自のものにつながったのかもしれませんが。
万人に薦められるかといえばかなり微妙どころか否なのですが、グロいの大丈夫な人はぜひ。
とはいっても、もうこの時期にここを見てる人はプレイ済みのような気もします。気にしないで進みましょう。
以下ネタバレ反転表示。
とりあえず冒頭の入りから鮮烈。画面外に臭気まで漂ってきそうな悲惨な景色から、郁紀の置かれた苦境が一発で感じられるのは流石というか。
しかも精神的なダメージではなく、脳の機能障害の結果であり元に戻る見込みがない、ということが郁紀の絶望をより一層深める。
確かにそのもう戻れなくなった世界が極限まで陰惨ならば、その世界にただ一人存在する沙耶との対比がより一層鮮やかになるので、演出としても効果的なのかも。
しかし、やはり異常な病を患った郁紀にすんなり感情移入できてしかも離れないというのが、このゲームの尋常でない所の一つでしょうか。
それに、郁紀と沙耶の関係をお互いの動機からこれだけ見せられてしまっては…。
そして最初の選択肢。こんな悩ましい選択肢…郁紀の苦悩を知るだけに…しかしここでプレイヤーの心理が脳を元に戻さないほうに自然と傾くのはもう流石というか。いや、自分だけかもしれませんが。
ポイントなのは、「異形の世界の中で沙耶だけが人間に見える」が、「通常の世界では沙耶は異形である」ことですよね。元の世界に戻ることと沙耶を失うことがワンセットになっているこの状況下では、郁紀には脳を戻さないことの十分な動機たりうるというか。
そして最後の選択肢、といっても2つ目ですが。
郁紀達を生かすのか殺すのか。生かせば人類が滅び、殺しても関係者は狂気に蝕まれる。
この人類が滅びるときの、沙耶がもはや神々しい…というのはまぁ勝手な感想ですが。
話の筋立てがシンプルなだけに、自分程度ではあまり深く切り込めませんし、そこまで斬新な構造とも思えませんが…恋愛物としては異端ながら出色の出来なのではと思います。