レヴィアタンの恋人

とある飛空士への追憶』が各所で話題になって大ブレイクした犬村小六さんの前シリーズ、というか今も続編が出ているかもしれませんが。とにかく前の奴。

飛空士の方が文句なく面白くて、ちょっと期待しつつも「この頃話題にならなかったのには何か理由があるはずだ…」と警戒して読み始めた一作。

結論から言うと、やっぱり首をかしげてました…うーん。つまらないと言う程ではないのですが。

中身は王道なのに、やたら分かりにくい挙句に、引っかかることが多くて戸惑います。

あまりよくないことを書くのでここから既に反転します。

お前の読みは間違ってるよ!と言う人がいれば指摘していただければと。

まず第一に、場面が飛びすぎで分かりにくいと思います。いや、分かりにくいだけならまだいいのですが、混乱してどう読んでいいか分からなくなってしまうほど。

最初のシーンなんて最後まで読んでようやく誰だか検討つきました…そういう要素が良くないというのではなくて、冒頭からそんな食いつきにくいシーンを持ってこないでくれ、というか。結局大した人物の話じゃないし。

飛空士のほうは、やはり序盤からいきなり時間が飛ぶものの、つながりが自然で容易についていけるのですが…。

第二に、運命的な台詞が散見される意味がよく分かりません。

ユーキが姉に似ているというのはいいとして…。姉が死ぬ間際にユーキとの遭遇を予見していたり、ユーキが魂が疼くなんて言ってるのは今後の伏線なのかもしれませんが、今巻だけ読む限りではあまり意味を成していないような。

第三に、世界が滅んだ理由です。

人の遺伝子を模したコンピュータプログラムによってウィルスが作られ、ばら撒かれて99%の人類が死滅するのですが、流石にそれはどうだろう。

まず、本書に登場するようなソフトが出回るなら、現代程度の危機感があればかなり慎重に出回ると思います。そんな危険性を孕んでいると大学生が認識しながら使うなんて状況になっている時点で違和感が。

気づいて放置されるレベルの話ではないですし、誰も気づかないのも不自然ですし。

宇宙から降ってきた隕石にウイルスが、という方がまだ納得…出来るかは別として。

第四に、キリヒトの残虐シーンはなんなのか?

薔薇のマリアシリーズのような無意味な残虐描写の多さを感じました…

沙耶の唄では、グロテスクさを上手く演出に使ったと言いましたが、こちらはあまり有効でないように思います。

キリヒトの幼稚な残虐性を示すだけなら、こんなに長々と描写されても鬱陶しいだけのような。飛空士の空戦シーンなどは圧巻で、スリリングで熱い戦いなのですが…

この話基本的には、男の子が身を挺して惚れた女の子を守ったり、逆に女の子が男の子を助けたりするまぁよくあると言えばよくある話なのですが、無駄によく分からない要素が多すぎであまり良さが伝わってこない…。

ので、面白い部分もあったかな?と思いつつも辛口な評価になりました。