幻想の未来 岸田秀


竹田青嗣さんの本を読む最中に出た、唯幻論に惹かれて読んだ一冊。

どうやら精神分析の畑の方らしく、フロイトの流れを汲んでいるようです。

とりあえずこの本で主張したいことは、人間は本能が壊れており、動物のように本能に従うだけでは生きていけないので、自我と言うものを立てて何とか生き延びたが、それは全て幻想で、確固たる自我を持つように見える他人も幻想にすがっているだけで、人類はそこから逃れ得ない。

しかしせめてそんな頼りない自我なら、それはそれでどういう構造を持っているかぐらいは知っておいたほうがいいだろう、というような話。

読んでいると、本当に救いようのない事しか書いていなくて、「じゃあ俺はどうやったら平穏無事に生きていけるんだよ!?」と叫びたくなること請け合いですが、その答えはなく上記のようなまぁ知っておけ、ということらしく。

この本はそこまで初期の本ではないらしく、「人間は本能の壊れた動物である」という事はもう前提になっていて、前の著作に書いてあるようでした。

岸田秀さんはこの本で初見だったのでその辺りが気になるというか納得しかねましたが、全体の主張は自分の足りない頭でももうちょっと考えてみようと思うほど面白かったです。翻訳じゃないからとっつきやすいというのもあるかなと。

とりあえず「ものぐさ精神分析」を読んでからもう一回読みます。面白いな…