あやかしびと

20世紀後半になると、奇怪な姿や異能をもった人間が現れ始めた。その原因は分からず、彼らはその妖怪のような力や姿ゆえに彼らは人妖と蔑まれ、迫害されていた。

そんな中、人妖である武部涼一は、少女とともに自分を隔離していた病院からの脱走を決意するが――

うーん、なんかあまり良い紹介ではないような気もしますが、出だしはそんな感じです。つか今更このゲームの記事を書いて何がしたいという話ですが、まぁ例によって気にしない方向で。

しかしこれは熱い。熱すぎる。

一言で言えば、大切なものを守るために、男は戦うんだ!という話(?)。

以下ネタバレ。収納する能力を得たので使ってみる。


この話、さっき言ったように非常に分かりやすい話ではあるのですが、秀逸なのはその大切なもの、というのがまぁ惚れた女だというのは当然として、ただの日常がその対象に据えられている点じゃないかと。

普通の人だったら、当たり前に存在する日常を守るというときにそこまでの強度は出ないと思うのですが、主人公の境遇から始まり、実に丁寧に、その日常のかけがえのなさが描写されていく。

別に描かれる日常自体はそれほど変わった話でもないのですが、この病院に閉じ込められ散々不幸な目にあってきた主人公の目を通してみるだけで、これほど輝いて見えるんだぜ、という。

日常に磨耗した我々(勝手に決めるな!)が、日常に磨耗した主人公の目を通して見たとしたらとてつもなく味気ない話になりそうな所ですが、その日常の大切さに説得力を持たせるというか移入させるのがとにかく巧いなと。

ここまででばっちり入り込んじゃえば、終盤の展開でもうたぎるたぎる、燃えたぎる。燃えあり、泣きありの怒涛のたたみかけ。いや堪能でした。

優れて思想的とかそういう話ではないと思いますが、とにかく面白い物語だったと思います。

あと音楽のタイミングとチョイスが神がかってた印象。トーニャのキキーモラとか、ここでくるか!と。

しかしひどく個人的なところなのですが、若干最後のすずルートにある3つのエンディングは少し疑問がないではないです。

まぁこういうゲームにはつきものだと思うのですが…基本的にエンドは1つじゃないとなんかぶれない?という。

や、選択した結果として別の結果にたどり着く、というのは全く問題ないです。

むしろより忠実に選択した結果意外は変わらない(都合よく不幸が回避されたりしない)方がより一貫性があるというか、強度の高い物語になってよいと思います。ご都合主義じゃなくなって。

ただ、熾天使薬を使わなかった場合と使った場合で、九尾の狐の扱いにちょいと差がありすぎる気が…それで倒せるものなのか!?と。

いやある程度伏線はあったけど…それで倒せてしまうと、熾天使薬使って激闘を繰り広げて幽世に行ってしまうというエンドの強度が下がってしまう気がします。

別に正解はひとつでなくていい、というのは分かるのですが…まぁ、それぞれの決意にはそれに見合った結末が用意されていると思えば納得できなくはないのですが。

まぁ九尾があまりにあっさり倒されてしまい肩透かしをくらった気分になったので、つい。

言いがかりみたいなケチつけましたが、それくらいしか言うことがない程よい物語だったと思っていただければと。