アクセル・ワールド5

鉄板のシリーズ第5巻。久しぶりに今更じゃないな。

エンタメとしての完成度の高さは相変わらず。内容としても広がりを見せていて、これからが楽しみな展開。

もうとりあえず読めばいいと思う。

以下ネタバレ。長いなー今回…

今巻のメインはレイカーでしたし、何となく判然としない部分があるので、彼女の台詞について少し考えてみることにします。

まずその判然としない台詞を引用すると、

わたしは今、ようやく悟りました。この足を失わせ続けていたのは……私の執着ではなく、恐れだったのですね。わたしは、空の大きさを知ってしまうのを……夢が終わってしまうのを恐れていた。だけど、そんな必要はなかった。なぜなら……この世界は、無限なのだから    p.315〜316

という部分です。

執着と言う言葉にはうなずけるものがあります。空をより飛びたい一心で切ったその足は、未だに空への執着が消えないために戻らないというのは自然な発想です。

しかし疑問は、空の大きさを知ってしまい、夢が終わるのを恐れていた事と、足を失った状態のままにすることになんの因果関係があるのだろう?夢の終わってしまう可能性としては、足を切ってわずかながら飛距離が伸びた状態よりは、足が戻ってもとの状態に戻った方が可能性としては下がらないだろうか?ということでした。

この疑問について考えるため、もう一箇所引っ張ってきます。

スカイ・レイカーは、諦めていたんじゃない。恐れていたのだ。強化外装を装備しても、かつてのように飛べないのではないか――両足が失われ続けているのと同じように、自分の負の心意が強化外装をも無力化してしまうのではないかと怯えていた。      p.231

という、シルバー・クロウの思考です。

まず最初の引用から、レイカーの大本の恐れが「空の大きさを知ってしまい、夢が終わってしまうこと」であることから考えていきます。

イカーにとって、親友を失って足を切り落としてでも先へ進みたいほどの大きな夢だったのに、その夢が(不本意な意味で)終わってしまうことは耐え難い恐れであるのは納得できます。

だから飛ばない理由が出来たとき、それにしがみつくのもうなずけると思います。その理由が足の喪失です。

前述のシルバークロウの思考で出てきた通り、レイカーはゲイルスラスターが負の心意で飛ぶ力を失ってしまうのではないか?という恐れから飛ぶことを避けていた。ゲイルスラスターが飛べないのではないか?という部分で考えているうちは、飛ぶこと自体に対する恐れは感じないで済む。

しかし足が再生すれば、負の心意がゲイルスラスターを無効化するのではという恐れは消える。その恐れが消えると、再びもっとも大きな根本の恐れに直面することになる。

だから足は再生せず、負の心意で飛べないのではという恐れが必要だった。足を喪失しているのは心意によるものとレイカーも言っていた通り、その状態である限りは負の心意が働いていると考えることが出来る。

ロータスとの関係が改善してレイカーが「飛べる!」と思ったときにも、涙だけじゃなく、希望もある、という言い方をしており、この時点では足が再生しない理由は消滅せず、従って足も再生していないことと符合します。

というわけで、足の喪失の原因が空を飛ぶことに対する恐れということだったのではないかなと一人で納得しておりました。異論は認める。

で、そう考えるとハルユキの取った方法はレイカーの本質をまさについていたわけで…ゲイルスラスターは宇宙仕様だ!なんて読みも馬鹿にならないなぁと。

加速研究会の意図については…長くなりすぎたしまだよく分からないので次巻が出てからと言うことで…