ミミズクと夜の王
これはよいファンタジーでした。解説の有川浩さんの言葉通り、「むかしむかしあるところに〜」と言いたくなるおとぎ話のよう。
なんというか、よく出来ていて、よく出来すぎている。奇跡のように歯車がそろい、全てがうまくかみ合い大団円を迎える。ある意味超ご都合主義。
不幸100%から幸せ100%によどみなく針がふれる、純化されたエンターテイメントというか。なんというか、シンデレラ?個人的にはそれがイメージぴったり。
リアリティーを求める人にはお勧め出来ませんが…だがそれがいい。どストレートなんだけど、面白いからストレートって言うんだぜ!と改めて言われた気がします。
以下ネタバレ
だってさ、
盗賊に奴隷として虐げられて、
焼きごてで額に番号つけられて332だからミミズなんて呼ばれて、
死体の腑分けをさせられて、
馬小屋で寝かせられて、
挙句の果てに人を殺してしまったと思って、
もう嫌だ魔物の王に食べてもらいに行こうって…
どれだけ不幸だよ!シンデレラも裸足で逃げ出すわ。
おまけに、不幸な自分を嘆くでもなく、フクロウに花を持っていってあげたり、迷い込んだ人を助けてあげたり。フクロウにきれいなものを持っていく理由に至っては、「汚い自分でも綺麗なフクロウのそばにいる!幸せ!」って。
もう、けなげと言うか…「こんな子が不幸であっていいはずがない!」ポテンシャル全開。なんというやるせなさ。
ここからの大団円。そりゃ面白いよ。
しかしまぁ確かに安い話ではあるわけですが、そこは作者の人のコンセプト的にもとても正しい姿ではないかなと思います。
素直にファンタジーに乗って「これはいい話だった!」というリアクションと、「こんなの欺瞞だ!」というひねくれたリアクションが考えられるけど、どっちもありでいいんじゃないかな。まぁ後者の人は読む本を間違えたねとしか。
心が洗われるようだった(笑)