とある飛空士の恋歌4


デル戦の途中ではあるものの、思わず一気読み。

相変わらずなんでこんなに面白いんだろうというくらい面白い…これは読者もそう選ばないだろうし、もうとりあえずみんなに読まれればいいと思う。

学園モノな仲良し青春描写、大望抱くロマン、しっかりした背景描写、ミクロとマクロの熱い空戦、暗い過去をもつ人間の克服と成長、と面白い要素を挙げていくだけできりがないほどいろんなものが詰め込まれている。これぞエンターテイメント!といいたい。

以下ネタバレ
今巻ではついにカルエルとクレアがお互いの正体を知ることに。

まぁ衝突から和解まで、最初に設定が分かったときからの予想通りといえばそうなんだけど、しっかり書けてるからそれでいい!

例えばカルエルの吹っ切れなさとか。復讐なんて下らない、なんてことをいう奴にはそいつの大切な人が殺されてから同じ質問をすればいいんだ、と言っていたどこかの誰かさんの台詞を思い出します。

そんな簡単に吹っ切れるようならとっくに人間やめてますよねー。

そこへ来てイグナシスの説得はさすが。復讐=自分の感情にしか目が行かないようになってるカルエルも、周囲の人間の、自分や周囲の人間に対する思いやりに目を向けさせられちゃ、復讐の正当性を疑わざるをえないよなぁ。さすがツンデレ

まぁクレアは悪ではないもの、そうならなきゃ…。けどカルエルも他人の事情に思いをはせるなんて、随分成長したなとしみじみ。

思うに、自分はあまりに利己的だから、そういうナルシズムを脱出するような成長や決意には強い憧れがあるので、つい感動してしまうのではないかという気がする。

しかしナルシズムからの脱出が強い聖性を帯びてかつ感動的なのは、人類の根本がナルシズムに根ざしているという意味では割と普遍的に言えることなのではないかとも思う。

いきなり何をほざき始めたかという感じですが笑。

ナルシズムというのはよほどのことがないと一時的にも脱出できないとみんな自覚しているので、うまく書けないと上滑りすると思うのだけど、この話はそれを書くのがとても巧みなんだと思う。

…ということを読み終わった後考えてました。

しかしノリピーやベンジーが助かったり、クレアが土壇場で力を取り戻したり、それ以前にこれしかないというタイミングで主砲が直撃したり、レヴァームの弩級艦艇やら、まぁご都合主義と言われればキリがないような展開ではありますが、やはり面白ければそれでいい。

ヒキが強烈すぎて相変わらず5巻が気になる…早く出ないかなぁ。