あの夏で待ってる 青春ラブコメの秀作


・苦甘青春ラブコメ

A,B,C,D,Eの五人の登場人物がいるとします。この登場人物たちが、→を片思いとすると、

A→B→C→D→E

初期状態でこうなっています。

そりゃあ丸く収まるはずがない。嫌な予感しかしません。

想像がつくかと思いますが、ほぼ全編この五人の惚れた腫れたが繰り広げられます。なんとなく映画の描写とかSFっぽい描写とかあるし、そういう話なのかな……とは、思わないでしょうけど。その辺は味付け程度ですね。

みんなまっすぐで嫌味のないキャラなせいか、基本的にさわやかな話なのが救いです。

普段ラブコメには基本手を出さないのですが、そんな僕でも面白く見れたので評価は高めで。脚本と絵もけっこうしっかりしていると思います。


・惚れることに理由がない

ライトノベルやエロゲなどでヒロインがたくさんいる、いわゆるハーレムラブコメ的なジャンルには、ヒロインが主人公を好きになることに対し強力な動機付けがあるという、現実にはない独自の風習があります。

主人公が選ばれることに対し、読者が納得する明確な理由が必要だからですが、それゆえに主人公がヒロインを選ぶ際にも明確な動機付けが求められます。

ロジックの通用しない話に納得できないというのはもっともですが、現実から乖離していくのも事実です。

このアニメの魅力の一つは、好いても好かれても、きっかけはあれどそこに理由がないことです。

真面目に恋愛を書きたいんだったらこうなるのかもしれません。つまりそれくらい真面目に恋愛を描いてるってことです。

まあ普通そんなもんでしょうしね。それにアニメの視点では主人公から比較的遠い視点で見ているため、納得感は特に必要こともありそうです。

三角関係を片付ける際には明確な理由が存在したように思いますが、そこはいい塩梅だと思います。


・周到で冷静な傍観者の存在感

また本作の魅力の一つに、冷静な傍観者の存在があります。

この作品の主要登場人物は6人。重要なところで空気を読んだ行動はするものの、1人だけ複雑な恋愛の輪に入っていません。全く別の目的を持って動いているからです。

恋愛という軸から外れた彼女の存在は、激しい感情に当てられた視聴者への一つの安らぎとなっているように思います。

ラストについても、この人は主人公とヒロインの再会に対し重要な役目を果たしていそうで(あるいは、勝手に飛んできたのかは分かりませんが)、要所要所を押さえて、話をぐっと広げて盛り上げてくれるいいキャラだったと思います。


・青春ラブコメの秀作

面白いし、よく出来ていると思います。特筆してすばらしいと言えるかは分かりませんが、青春ラブコメでニヤニヤしたりキュンキュンしたい人は見たらいいと思います。