ノーラと刻の工房 情緒豊かなやさしい世界
- 出版社/メーカー: アトラス
- 発売日: 2011/07/21
- メディア: Video Game
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・アトリエ系の秀作(多分)
ゲームをするときに何を求めるでしょうか。
ストーリー、キャラ、戦闘、やりこみ、ダンジョン攻略etc...
ゲームと一口に言っても本当に多様性があり、様々な要素があります。
その中の一要素に、「世界観や、そこで暮らしている感覚を楽しむ」というものがあります。
大胆に起伏に富んだストーリーでもない、テーマを掘り下げるわけでもない、凝った戦闘システムややりこみでもない。ただ、人や町とのつながりを丹念に描くことで、あたかもそこで暮らしているかのような感覚をもたらしてくれる。
そんなじわっとくる面白さ。まさにこのゲームはそんな面白さです。
・依頼の達成感とそこから生まれる連帯感
これがなぜ面白さにつながるかと言うと、コミュニティに帰属してそこでつながりを得ることの喜びを味わえるからだと思います。コミュニティに受け入れられることはすごい自己肯定感をもたらしますからね。それを地道に築き上げていくところが最大のポイントではないかと思います。
街の人々から依頼を受けてそれをこなすという形で人と交流することで、野山を駆け巡り、あるいはお店で情報を買い、とにかく苦労しながら達成していくことになります。
プレイヤーは登場人物と一緒に悩んで、苦労することによってゲームの中の世界をより身近に感じるようになる、とそんな仕組みだと思います。ここら辺にはゲーム的な面白さもあります。
またこれは仲間との絆も含まれます。このゲームでは、仲間になる特別なキャラが複数存在します。彼らとの絆をプレイヤー自らが能動的に深めることは、この帰属する喜びととても相性がいいと思います。
まあ人の出来ないことをこなし、期待に応えられる優越感的な話もないではないと思いますが……基本的にそれがない話ってあんまりないので。
・けなげ萌え
ゲームは比較的に能動的な媒体なので、この要素は少ないかと思いますが。
主人公のノーラは、それはそれはひどい扱いを受けます。スタート時は迫害され、店でものを買うことすらできません。
これ、ノーラだから大丈夫だけど、普通に移住してきた人だったら死活問題ですよ?
それでも酒場のおっちゃんの好意でなんとか依頼を受けさせてもらえることになり、それを一つ一つこなすことで町の人の見る目を変えていく……
これに愚痴ばっかり言って自分の不幸を嘆くようなキャラだったら残念なところですが、この主人公は底抜けに明るくて前向きです。
自分のことを魔女扱いして排斥する町長ですら、町のために尽力しているんだから、と怒りつつ理解に勤めるようないい子です。あんた心広すぎだよ。そりゃ応援したくもなります。
そういう意味では、とてもやさしい世界観ですね。根っからの悪人もいないし。モンスター扱いで盗賊とかも出てきますが…
ここは先ほどのポイントと相性のよいところだと思います。
・雰囲気を盛り上げる音楽、邪魔しないシステム
ここで一つ注目するべきは音楽がなるけみちこなところです。
これは重要です。なにしろあのアームズの独特の空気を見事に表現しきった、いやその空気を確立しさえしたあのなるけみちこがサウンドです。良くないわけがありません。素晴らしいです。
こういう雰囲気が大事なゲームには重要なファクターだと思いますが、見事に調和するものとなっていると言えるのではないでしょうか。
また、ストレスを感じさせないシステム周りにも触れる必要があるでしょう。インターフェースは感覚で分かりやすいし、ロードやダンジョン巡り、町の移動など面倒な部分はほとんどなく、非常にストレスフリーな仕上がりです。
重要なのは、それがゲームの面白さに直結する点です。この部分で入るのに失敗してしまえば、せっかくの雰囲気が台無しです。
そういった点を鑑みても、本作品は一貫している良作と言えるのではないでしょうか。