東京レイヴンズ2 それは果たして引き伸ばしなのか、描写の積み重ねなのか
東京レイヴンズ2 RAVEN゛s NEST (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: あざの耕平,すみ兵
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2010/09/18
- メディア: 文庫
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・だいたい少年漫画
陰陽師を育てる学校、「陰陽塾」に入学することで、一気に学園モノっぽくなってきました。
だいたい少年漫画のノリですね。努力、友情、勝利。特にテーマ性もないと思いますし、王道エンターテイメントです。まあ努力は……これからするんじゃないでしょうか。
小さい事件に巻き込まれつつ、裏で何か大きな出来事が動いていくと言う、典型的なファンタジアパターン(今勝手に考えた)です。
『鋼殻のレギオス』『氷結境界のエデン』なんかが典型ですが、とりあえず1,2冊程度で完結する小事件で積み重ねつつ、裏で大きなストーリーを少しずつ動かしていく形がファンタジアにはなぜかとても多いと思います。そういう方針なのかな。
しかも小事件と大事件に大して因果関係がない。
最初から長編を前提にしているからなのでしょうけど、何となく煮え切らない。そんなわけで本巻に対して関係ありませんが、今回はその辺を中心に考えたいと思います。
・一冊でそれなりに楽しめる構造
上記の3作品に共通なのは、基本的には1冊で事件が終わるため起承転結がはっきりしており、単体で読んでもそれなりに楽しめることだと考えています。
だいたい一冊で収まらないと売りにくいと思うんですよね。漫画と違って、ラノベは次が出るまで最低でも数ヶ月、長ければ1年とかかかりますし。引きが強くてもなかなか手を出しづらくなるかもしれません。
それに安定したクオリティで1冊完結していた方が、エンターテイメントとしては安心できると思います。水戸黄門みたいな。
加えてキャラクターの描写を積み重ねることで、バックグラウンドに厚みが出る点は大きなメリットではないかと思います。
ただ一冊で完結させるという制約が、シリーズとして読み進めたときにブレーキをかけているように見えるんです。
・本筋と関係のない小粒な話が増える
問題点のひとつは、本編を進めるほどの積み重ねを進めるまでに、あまり関係のない小粒な話をたくさん挟まなければならない点です。
レギオスであったら、いつレイフォンの動機を持つ、核心に触れる事件が起こるの!ってことです。15巻以降は読んでないので知りませんが。
エデンであれば、いつになったら世界の秘密をバラすのかとか、そのしゃべってる悪役はいつ出てくるのかとか。最近まあようやく進み始めましたけど。
そんな感じで本作品も、夏目の核心に触れるようなキャラが少しずつ出ていながら、暗躍するに留まっており、実にもどかしい。
・話を成立させるために物語の推進力を減らしている
常に本編の話しかしない『空の鐘の響く惑星で』とか、『とある飛空士の恋歌』などと具体的に何が違うのか?
今考えた限りだと、単発系は「終わり方は決まっているけど、物語がいつ終わるか決まっていない」のではないかと思います。
人気があれば、伏線で引っ張りながら話を増やしていけるわけで。一見読者も得、出版社も得、作者も得というように感じます。
ただ作品として考えると、引き伸ばされて終わらないのはマイナスだと思うんですよね。山や谷は全体の高さもさることながら、その長さも大事と言うか。
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だから、できることなら話が見えたらそこまで一直線に行ってほしいなと、個人的には思っています。
レイヴンズに関しては、まあまだ序章でここから一気に行く可能性もあるので、一概には決めない方がいいかもしれませんが。
そう考えると、ゆっくりしか進まないのにいつまでも浸ってたくなるような『マリア様がみてる』というのは、やはり偉大だな!というのも、ついでに。まあ日常系というのは、それこそ続けるのに特化した構造と言えるわけで、そこにあれだけ物語性を詰め込んだのがすごい、と言うべきかもしれませんが。