7回死んだ男 西澤保彦

友人の勧めで久々にラノベ以外の小説を読みました。

本人曰く、ループもので本格ミステリが書けないかとやってみたそうなのですが、そんなにミステリ色は強くない気も。まぁ本格ミステリというジャンル自体が何を指すのかよく分かってないですが。

随分前の本ながら、語り口なんてラノベクラスの軽やかさだし。謎に引っ張られるよりは先の展開が気になってどんどん読み進めて、気がついたら終わっていたような。

謎を謎と気づかないまま読んでいって、後から言われてびっくり、という感触だったのですが、ミステリとしてはいい事なのだろうか…そちらのほうが断然好きなので良かったのですが。

何となくミステリって、「ふふん、さぁ解いてごらん?解けないだろう?答えはこれさ、だってこうだろ。残念だったね!」という幻聴がして無性にイラっとすることが多く弱点なんです…

要するに探偵が解けるのに自分が解けないから、劣等感というか敗北感を感じて腹が立つのかな。別に世界には自分より頭のいい人なんて腐るほどいるだろうけど、だからといって改めて誇示されて嬉しいわけではないし。

その点この話は「やぁすまない、黙ってたけど実はこんなんだったんだ!楽しんでくれたかな?」と言われた気がして、素直に「ああ、とても楽しめたよ!よかった!」と答えたくなってしまうというか。ただの妄想ですが。

だからこの話の秀逸なところは、主人公が全然名探偵でもないし、頭が切れるわけでもないところかなと。強いて言えば口が達者だけど、それだって別にループしてる話からすれば年相応と言えなくもないし。

それなのに、謎の大きさは大したものなので、思わず唸らされました。素直に話としても面白いし。ドロドロ人間模様とか、妙に自分がかわいい登場人物とか。

というわけで個人的には「らしくない」ゆえに楽しく読めてよかったかなと。

ミステリ的には中身に触れたら終わりだと思うので、この辺で。