驕れる白人と闘うための日本近代史

江戸時代〜開国その後くらいを中心に、タイトルそのままの内容で真正面から勝負を挑む本。

なにこれ超面白いんですけど。

しかしこれよくドイツで出版されたな…もう、そのこと自体がこの内容の客観性と信憑性を高めているような気もする。

元々はヨーロッパ人の思い上がりを叩きのめす本だったようだけど、日本人が読めばそのまま卑屈さを払拭できるような本だと思う。

とは言え、別に日本人はすばらしい!と根拠なく歌い上げるような胡散臭さはなくて、評価するべき部分を知りもせずなぜ西洋人の言い分を唯々諾々と受け入れているのか、という論調。

耳が痛い…けど歴史なんて高校受験で詰め込んで以来すっかり嫌いになっていたので、あまり食指が動かなかったのも正直なところ。

しかしいざ読んでみるとこれが面白いのなんの…。

まず、学校で習う歴史の意味づけや価値観って基本的に西洋のものなんですよね…まぁ先生にもよるんだと思いますが、自分はそうでした。

そこから出発して、実際のところを見て、いかにその最初の見方が偏った自己正当化されたものか浮き彫りにする。その皮肉っぷりが痛烈で痛快なこと。

でもそれなら、逆に日本よりな部分もあるんじゃないの?というのは当然考えられることで、その可能性はあるし、知識がないのでそうかどうかも分からない。しかしながら。

日本の近代化がなぜあれほどスムーズに進んだのか?という点から出発して、その考察として江戸時代の制度、文化、産業などを検証した結果から、近代化のときに西洋から植えつけられた「我々の歴史はありません。ここから始まるのです」という台詞がいかにも正しかったかのようで日本のその後の発展は全部西洋のおかげ、といった見方に異を唱える、というのはとても説得力のある言い方だと思う。

そもそも、日本の近代化がスムーズに進んだのがただの猿真似で西洋のおかげなら、どうして他の植民地はできなかったの?という指摘も、なるほど納得。

ただ猿真似が得意なだけとか、神秘の国とか言ってるよりははるかに説得力のある言い分だと思う。

それに、西欧の外道さも確かに目に余るほどだけど、日本に付け入る隙があったことも包み隠さず考察している。西欧に不平等条約を押し付けられた後、それをそっくりそのまま朝鮮にやる外道ぶりも。

これを読んでいると、歴史は誇るとか恥じるとかそういうもんじゃないな、と言う気がする。そういう観点が入ると、自己正当化すれば相手が立たず、卑屈になればのさばらせる。

評価するべきところはするべきだし、問題があった点は指摘されて然るべきだけど、あくまでフラットな見方をされるべきというか。

だからこそ「驕れる白人」と闘うためであって、ただの白人と戦う理由もない。

そういう観点から見れば歴史も、わが身を振り返りつつ、現代のあり方を考えつつ、面白いしためになるもんだなぁと思った。

全力で面白かった。★で言えば5つに相当するかもしれない。