[映]アムリタ

映画を題材にした青春真っ只中小説…と見せかけて、まさかのミステリー。

あまり先入観を持たせるようなことは言うべきでないと思うのですが…このカバー裏のあらすじでこのストーリーはかなりよくない意味で意表を突かれる気がしまして。

目当ての内容であることがいい事というわけではないです。別に予想を裏切る事は悪くないのですが、というか予想を超えることはよいことだと思いますが、上記のようなジャンル違い的外され方はしても正直あんまり嬉しくないというか。

まぁ別に作者の人がそれをやってはいけないわけでもないので、的外れなこと言ってるかもしれませんが。

下馬評を見て買う人には無用の忠告かもしれませんが、さわやかな内容を期待する向きは手を取らないが吉ではないかと。

逆にちょっとクレイジーな内容がほしい人はあらすじに反して楽しめると思います。

以下ネタバレ
前半のちょっとけだるげ、映画大好きな雰囲気から終盤に一転、ダークな展開へ。

天才の動機として、人間の振り切れた感情が見たいというのは、理屈的にはありかなと。最初の動機はどこへ行ったって感じですが。

しかし、この女結局何がしたかったのかと考えると疑問が残ります。

とりあえず定本がいちゃいちゃする前に死んじゃって切ないので、『アムリタ』を作って二見に見せて定本化する。で、その定本化した二見を映画に誘って仲良くなる。

ここまでは分かります。「現実には少し手を加えないとドラマにならない」という言葉は映画とか作らないと、と言う意味で取れます。

ただ、ここから二見を『アムリタ』関係を使って迷走させて、自分に首っ丈にした後絶望させて喜ぶ下りで、「ああ、その表情が見たかったんです」と言う。

こちらが本来の目的だと、「現実には少し〜」と言う台詞は、実際はこの絶望を作るためと言うことになります。二見といちゃいちゃするだけなら絶望させる必要もありませんし。

そうなると、最初から定本の時も最後には絶望させて喜びたかったんじゃないの?という疑惑が出る。

絶望させるのは二見に関わってる途中で降って沸いた考えなのかもしれませんが、そこまで外道なことをやってのけるくせに、忘れさせる情がある辺りなかなか一貫した姿勢が見て取れない。これは…まぁ気分屋なのかなぁ。

というか、序盤に伏線はあったけど、そんな空気は全然出てなかったよ…別の人間に作り変えるの上手くいきすぎだろう…。

個人的には、設定として飲み込めなくはないですが、人間が作り換わるとかありえねーと思ってしまうので、その辺が齟齬をきたさないのがそれなりに不満。

まぁ、これだけ重大な不満をきたしておいて星が3つより下らなかったのは、会話が軽妙だったことと、前半の映画辺りで読ませてくれたことに尽きそうです。

機会があれば次作にも手を出してみようかなと。