やはり俺の青春ラブコメは間違っている4 人間関係(?)の機微を描いた秀作
- 作者: 渡航,ぽんかん?
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/03/16
- メディア: 文庫
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・間違いすぎた
ラブコメじゃなくね?
とりあえずこれは言っておきたかった。どうせこんなタイトルしておいてラブコメなんだろと思って読み始めたら血を見る。古傷を抉られること請け合いです。
いや、うまく立ち回れてた人はそんなことないのかなぁ。そんなわけねーとか笑い飛ばせるんでしょうか。私はあまりに他人事じゃないのでたまに主人公と一緒に泣きたくなります。
コメディのクオリティはパロディも非パロディ、共にとても高いと思います。毎巻登場するスクライドで必ず笑ってしまう。どんだけ好きなんだ。
途中でさらっと出てくるおすすめのファンタジー長編小説も本気すぎる。実にツボを押さえたラインナップ。
ただしラブではない。いやラブコメに着地する予感は見せつつも未だにそこまでたどり着いていないと言うべきでしょうか。
・恋愛以前の問題
なぜラブコメというカテゴリじゃないと言い張るかというと、未だにラブの前の信頼関係を築くことについてをテーマとしてずっと扱ってきてるからです。
主人公が対人関係で自信がなさ過ぎて恋愛にならない。この強烈なまでの卑屈さはぼっちだったことのある人特有のスキルですよね。見に覚えがありすぎて何もいえません。
また背景として、主人公の「信頼の失敗」が徹底的に繰り返しネタとして登場します。
友達だと思ってたけど向こうはそう思ってなかった、とか、誕生日を祝われたと思ってぬか喜びしてたら同じクラスの別の人だったとか。
信じない方が楽だ!と結論付けるに不足しないほどひどい経験をしてきています。さすがに俺もここまではなかった。
・ガラスのハートならまだ大丈夫
しかし一方で、その現状を肯定しきっているわけでもない。雪ノ下の毒舌で傷つくし、何気ない出来事からもダメージを受けます。
まあ当たり前のことではあるんですが、この開き直っている風でいて、実はあんまり成功しておらずどっかで友達とか欲しいなあって思っている辺りがポイントですよね。
結局どんだけひどい目にあって、ここまで開き直ったって、人との信頼関係と言うのは求めてしまうものなんだ、というか。決して「積極的に」「全ての人と」と言うわけではありませんが。
どこに着地点が来るのかまだ予想できませんが、ヒロインの誰かと信頼関係を築くことで人間関係においてある程度自信を取り戻す辺りが当面の目標になりそうです。
形式としては『アクセル・ワールド』と一緒でしょうか。アクセルワールドの方がはるかに直接的に主人公が卑屈ですけど。
・別にぼっちが悪いわけじゃない
ぼっちというのはまあ要するにクラスで孤立している状況なんかを指すと思いますが、単純に孤立することが悪いわけではない、というのはまさにその通りだと思います。
確かに「うまくやっていく」必要はあるでしょうけど、だからと言って仲良くしなきゃいけないわけじゃない。ましてや「空気を読む」必要なんて全然ない。理屈の上では。
それでもどうしてもそれを徹底しきれないのは、本来的に(注・後日追記)社会における自分の価値を決めるのが他人だからだと思います。
自分に価値がない、と言うのは実に不安なものですし。まあ価値なんて存在しない、というところまで行けばその意味では楽になりますが、ある意味自己無価値感よりはるかに辛いし、そこから脱出するのもまた大変です。
所属しているコミュニティにおいての評価によってほとんど価値が決められてしまう以上、周りの目=周りの価値観を気にして、それに沿おうとしてしまうのはある意味当然の自衛行為だと思います。
逆に言ってしまえば、周りの目が絶対的に正しいなんてことはありえない、ということを認識してしまえば、この苦痛からは比較的開放されるように思います。
「間違っているのは、世界のほうだ!」という奴ですね。
向こうを間違っていると言える、つまり自分の価値基準を明確に持てるようになれば、まあだいたいは開放されるんじゃないでしょうか。孤立するか、しないかは別として。多分しますけどね……特に高校位までは。
まあそもそも、高校まではそんな風に考えるのは無理でしたけど。比企谷は大人だなぁ。
他人からの目を重視する人間は、常に自分の正しさを証明しなければなりませんから、連中は常に攻撃する対象を探しています。あいつらは不幸だと断定することによって自分たちの安定を得るのです。くだらないパワーゲームに終始して、何が残るのかは知りませんが、まあ勝ち組だ負け組みだといっている様は本当に楽しそうなので、そっとしておくのがいいかもしれません。
周りの目が気になるあなたは、この小説を読んで一足早く啓蒙されましょう!