ラ・のべつまくなし3 ライトノベルとは何なのか、という問い

ラ・のべつまくなし 3 (ガガガ文庫)

ラ・のべつまくなし 3 (ガガガ文庫)

※ネタバレ

ラノベ作家もの…?

文学作家としてデビューした矢文学ことブンガクくんだが、大して売れずレーベルも廃止。路頭に迷ったとき、拾われたのはライトノベルで……?

そんな出だしから考えると、遠いところに来たなあ、という印象です。正直2次元アレルギーの話とか言われるまで忘れてた。

最初はただの恋愛ものだったのですが、巻が進むごとに「ラノベ論」「作家論」的な要素が含まれてきて、その辺が作家だけにストーリーに直接絡んでくるのがいいですね。


・文学との対立を通してラノベを考える

今巻のテーマの一つに、ラノベってなんなの?というものがあります。

どちらかというと物語自体に対する問題提起に近いのですが、「文学」と「ラノベ」で対立する構造にしてラノベを考えたのは面白いなと思います。

私自身が文学に対する理解が不足しているので深くは突っ込めませんが……文学を「現実を描くもの」に対し、ラノベを「理想を描くもの」としたのはどうなんでしょうね?

私は近代文学は、全て実存を取り戻そうと必死になった試みだと思うので、現実に対抗しようとして描いたと言えば文学もそうなんじゃないかと考えないではないです。

まあ主人公がどちらを書くべきか悩んでいることが問題なのであって、それを解決する差があればいいのですが。そういう意味では、理想(≒エンターテイメント)を書きたい!というときにラノベを選択した、という見方の方がいいかもしれませんね。

結論はともかく、真面目にこの問いに対して答えを返そうとする試みではあったと思います。


・やっぱり恋愛は信頼関係の構築が肝なのか


恋愛については、東雲侑子シリーズの特に2巻と全く同じ構造を見たというか、むしろこれが恋愛ものの基本系なんだろうなと思います。

自分に対する自信のなさと、どう折り合いをつけるか。相手の気持ちに確証が持てない中でどう行動するのか。

個人的には、主人公の心情をリアリティを持ってしっかり描いた意味では東雲侑子シリーズ、劇画調でガンガン押しきったのはラ・のべつまくなしという印象です。

同じものを書いても、テイストにこれだけ違いが出るんだから興味深いです。

この辺はもう少しなぜ違いが出たか考えたいですね。