東京レイヴンズ1 SHAMAN CLAN スピード感のある展開
東京レイヴンズ1 SHAMAN*CLAN (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: あざの耕平,すみ兵
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2010/05/20
- メディア: 文庫
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※2節目以降ネタバレ
・これで東京レイヴンズなのはすごい
東京の夜に舞う、闇鴉(レイヴン)の群れ。
……って開始13ページに書いてあったら、そういう話だと思うじゃないですか。
陰陽師のことを闇鴉(レイヴン)と呼ぶのですが、しかしどうも中身がレイヴンズでもなければ東京でもない。
読み終わるとようやく東京レイヴンズがどういう意味なのか、おぼろげながら分かります。しかし1冊丸まるつかってプロローグって。
それもライトノベルにはよくある話、になりつつあるような気はしますけど。その中でもきちんと物語があって、相応の盛り上がりを見せる辺りは熟練の技なんでしょうか。
友人の話によると、6巻がヤバイ面白いらしいので、期待してちょいちょい読み進める……と思います。
・基本はエンターテイメント、成長は……
基本はエンターテイメントで、先の気になる展開で引っ張っていきます。色んなことが同時に起こりかなり事態が混迷しますが、気の緩むポイントが少ないので疾走感がある気がします。
比較的キャラ配置が都合良くできてますので、滞りなく物事が進むことも理由かもしれません。なんというかかなり意図的に物語を「回す」キャラがいて、不都合は全て彼が解決してくれるというか。
物語が展開するスピードというのは今後少し注目してみたいなと思いました。話のタイプによって適正なスピードと言うのがありそうなので。この話はさくっと進めて正解だと思いました。
主人公は等身大で、無双するタイプではないです、今のところ。等身大の主人公が、それでも精一杯あがくことで事体を動かすところに面白みがあると思います。
・才能がないからやめます、という言い訳
主人公・春虎の成長については少し疑問符……まあエンターテイメントメインなので、ここはあまり気になりませんが。
才能がないからやめます、と言って日常生活を送っていますが、最終的に「やるべきことをやらなければ」と言って戻ることになります。
才能がない、というのは比較的顕著に分かってしまうことも多いですが、だからやめます、というのは二つの落とし穴があると思います。
一つは、別の才能によって補えるケースが意外と多く存在していること。又は続けていることによってカバーできることがままあること。
二つ目は、才能のないことがやめる理由にならないケースも多いこと。
供給より需要の方が大きければ、何かしらの役割すら全くないというのもまあ珍しい話です。
個人的にはこの「やるべきことをやらなければ」という義務からくる動機はかなり微妙で、「義務とかはどうでもいい。結局どうしたいの?」といって蒸し返されることが多いような……。
・主人公のありえないほどの鈍感力
この小説でもっとも衝撃的だったのは多分ラストの主人公の反応で、「こいつ馬鹿か?」を通り越して、「こいつ頭大丈夫か?」のレベルです。これが主人公に必要な力ということか。
どう見ても自明なのに気づいていないという展開から、ラブコメネタに持っていくのだと思いますが、なんという力技。
相手の好意に気がつかない、又は信じられないと言うのは自分に価値がないと思っている=自信がないというのが定番だと思っていましたが、そっか、理由っていらないんだなー…。