STEINS;GATE‐シュタインズ・ゲート‐ 比翼連理のアンダーリン(2) 世界線を巡るミステリ?
STEINS;GATE‐シュタインズ・ゲート‐ 比翼連理のアンダーリン(2) (富士見ドラゴンブック)
- 作者: 海羽超史郎,huke,池田靖宏(5pb.),5pb.×ニトロプラス
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2012/04/20
- メディア: 文庫
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終わってなかった…
2節以降ネタバレ
・どうしてラブコメであるかのように振舞うのか
これはラブコメではない。
私はジャンル分けなんて作品に対してはそんなに意味のない、強いて言えば入り口のためのラベリングという認識なので、ここをとやかく言うのもどうかと思うのですが。これは絶対損しているように思えるので、あえて強く主張したいと思います。
なんでだろう。世の風潮がラブコメだからか……実際そっちの方が売れているんでしょうか。そういう数字やムーブメントにはそこまで興味がないので詳しいことは分かりませんけど、アニメ化とかを見ているとそっちが推されているのは何となく感じます。
しかし、そうであるからこそ、本書は一般的なファンディスクとは異なるものであるということを打ち出した方が良いように見えます。そのような認識をしていたため手を取らない可能性を考えると、もったいなさ過ぎる。かくいう私もそれで手を出すのが遅れたくらいです。
そうやって手を出さない人の方が圧倒的少数である可能性も、まあ、否定できませんが……とにかく、本編並みとは言いませんが、それほどの面白さを持っていると思います。
・本編との関係
シュタゲ本編では、基本的には記憶を引き継げなかったパターンと言うのは無数に存在するとされつつも、最後にたどり着く岡部はそうであってはならないため、大きく取り上げられることはありませんでした。
しかし、今回は記憶の引継ぎがうまくいきません。単純に同じ時間をやり直す中で、「たまたま」別のルートに入ったりする様がある意味冗長に繰り返されています。
そりゃ記憶を失ってしまえば、本当の意味でやり直しになるだけで、何の違いもありません。
そこで、今回は「リープ前の記憶がほとんどないんだけど、たまにデジャヴする」という微妙なケースの岡部です。
このことにより今作では、「今ループしているのはどんな世界線なのか?」を岡部と一緒に追求していくと言う新たな面白みが生まれていると思います。
私たちは今や、たくさんの世界線の末路を知っていますし、シュタインズ・ゲートに入った岡部も知っています。ならばこの世界線はどこから派生してどこに行き着く世界線なのか?という、前作からの積み上げがあるからこそのミステリが成立します。
加えて言えば、ループする際に記憶が失われるため、岡部の視点で見れば一回性を失わず、何事もなかったかのように違うヒロイン(?)を攻略できるという長所もあります。
一回性が失われると何がまずいかというと、そのストーリーの唯一性にケチがつくからです。二周目において出会ったヒロインは、例えば「一周目では見捨てたヒロイン」であり、もっと端的に言えば「選ばなかったヒロイン」であるという経験を、既に私たち(or主人公)はしています。そのため、抱く幻想の強度(単純に物語の強度としても良いです)がどうしても弱くなってしまうと思うからです。
これは、「ユーザーが自分でループ(二周目的な意味で)すると、基本的には一回性が失われていること」と、「主人公がループすると、主人公にとって一回性が失われていること」というジレンマを解決する手段として有効なのかなと思います。まあそういう点で見れば、確かにラブコメとしても優秀な構造を持っているといえるのかもしれません。
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このように、構造としても優秀な要素を持ち、かつ当然前作同様文章や構成も巧みですから、とても「面白い」です。
続きものについて、途中で書くのは何とも中途半端ではありますが、これを読んだときはこんなこと考えてたのかーとか、きっと思えると信じて、とりあえず書くことにします……