009 RE:CYBORG 原作リスペクト……?

※2節目以降ネタバレ

・超人たちのハチャメチャアクション、ただし背景はややこしい

最初に断っておきたいのは、私は原作を全く知らないということだ。完全に神山健治の名前に釣られたタイプなので、この映画がどんな立ち位置なのかすら十分に説明することができない。が、そんな視点から見た感想でもとりあえず書いてみようと思う。

私が見てまず思ったのは「多分この作品は相当『サイボーグ009』という枠をリスペクトして使っているんだろうな」ということだ。そしてその枠を使った中で神山健治テイストを出すとこうなるのか、と。

今回の映画の設定がどこまで原作に準拠しているのか分からないが、なんとなく原作の設定を精一杯尊重して、そこから時間が進んだ後であったり、様々な解釈が可能な範囲での「if」に留めようとしているように見える。それでいて背後で蠢く権力闘争は、神山作品らしく(適当な決め付けかもしれないが……)実にえげつない。

正直に言ってかなり消化し切れていない部分があり、十全に楽しみ尽くしたとは言えない。キャラクターも全く知らなかったので、設定を飲み込むだけでも一苦労だったのに、何しろ話がややこしい。

ただ、それでも3D+超能力で魅せる圧巻のアクションシーンなどで楽しませる力を持った作品ではあったと思う。


・原作を知らないと辛い面も多い

恐らく原作が関わっていると思うのだが、そちらを全く知らないと、設定に不可解な点が非常に多い。ので、「まあそんなもんか」で考えるのをやめるほかなくなってしまった。

例えば、「3年間ごとに記憶をリセットしてずっと高校生の日々を繰り返させる」という設定が既によく分からない。

自分が時間と共に変わらないストレスを軽減する、と言うことだった(ような気がする)が、ほかの面子も同じ時間生きているし見た目も変わってないはずで、なぜ彼だけ記憶を消されていたのだろう。彼だけ不安定なのだろうか。

また、世界の危機には集まって正義をなす、というような文言があったが、我々が正義でなくなったのはいつからか…とか、真っ向から否定してかかるのも分からない。後半が神山解釈の展開ということなのだろうか。元は実はすごい単純な勧善懲悪ストーリーだったものを、解体して枠だけ使ったようにも感じる。

そもそも凄まじい勢いでテロが起きているわけで、危機と言うかもう実際に被害が出た後で集まり始めてどうするんだ、という気もする。

何より不可解な点は、009が核爆弾の発射をあっさり容認した点である。

加速の能力に何か制限があるのかもしれないが、彼ならば容易にあんな飛行機止められるだろうという風に見える。にも関わらずジェットとの話し合いに時間を浪費し、結局ミサイルの発射を許してしまい、ひとつの都市が消滅した。この時点で気持ちのいい勧善懲悪からは程遠い。

というか、この展開で俺たちが守る!とか言われても「え、今から?」と思ってしまう。いや別に彼らが正義でないことも、爆弾を止められなかったことも構わないのだが、あまりに一貫性がないように感じるのだ。

むしろ映画のラストにおける009の「世界は?いや、それよりジェットは!?」という台詞から、私は「この00ナンバーズというのは仲間のことは何より大事だが、実は正義とか世界とかどうでも良いんじゃないか?」とさえ思った。

それに、あまりに終盤の展開が中盤までとつながりが薄くないだろうか。いやこの分かりやすい展開が009の味だったからあえてリスペクトでこうしたのかな、という風に解釈したが、それにしても盛り上がりと展開がリンクしていないような気がする。

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私の理解する能力があまりに低いのかもしれませんが、原作を知らないと正直ストーリーに関してはあまり期待しない方がいいような気がします。

彼の声から、ラストに関する展開は普通に見ていてもさっぱりなにを言っているのか分かりません。人間は汚い生き物だから滅ぼす→それを正そうとする素晴らしい一面もある!と反論→生存 というお決まりのパターンから何か外れたんでしょうか……?ラストのロジックも不可解でした。なにかキリスト教などの予備知識でもあれば話は別なのかもしれませんが。

その他にも、お前今までどこ行ってたんだ、とか、あの少女結局なんだったんだとか、詳しく検証する気がないと何も分からないほど説明してくれないのですが、諦めても最後の展開に問題がないと言う意味では割とバランスに配慮した結果なのかもしれません。

オススメか?と聞かれると、なんとも。まあ見たことに後悔はありません。