問題児たちが異世界から来るそうですよ? そう……巨龍召喚(3) ゲーム性のある異能バトルが楽しい

※タイトルの番号は勝手に振りました。実際はありません。

・異能者達の頭脳バトル

とんでもない異能を持った人間が、その異能ゆえに何でもありな「箱庭」に呼ばれ、その場ごとに違うルールを持った「ゲーム」で勝負をする、という自由なバトル小説。

その本作の最大の長所は、主人公たちがいずれも通常の基準でいえばチート並の能力を持っているにも関らず、「ゲーム」という舞台で勝負するため、さらに頭脳戦を取り入れている、というところだろう。

ゲームのカラクリを紐解いていくミステリ的な楽しみを持っている、と言ってもいい。もちろんミステリほど本格的に解かせるわけではなく、謎で物語を引っ張っていくということだ。

そのため、無双ものではいささか単調になりがちに思えるバトルに緊張感が生まれる。この辺のテイストは『カンピオーネ!』に似ている。ゲームの謎が神話や説話からきているので、若干ながら物語に関連付けられて知識を得る喜びがある辺りにも通ずるところがある。

次節で詳述するが、キャラがいい点も見逃せない。

ただ重大な問題があるとすれば、序盤は「ゲーム」や世界観の説明に非常に難があり、場合によっては理解を放棄して読み進める方が賢明なこともある。

「ゲーム」のルール説明の際には契約書が出てくるのだが、実際の契約書などの雰囲気を出すために、あえて分かりづらい日本語を選択しているのは分かるのだが、それがきちんと噛み砕いて説明されない辺りが非常に惜しい。

特にゲーム性を取り入れることによるバトルのメリハリが売りであるだけに、この点を差し引かないわけにはいかないが、それを補って余りある魅力を秘めた作品であると思う。


・経験の伴った異能キャラ

本作の長所として、構造的な魅力のほかに、キャラクターが持つ魅力も大きい。

異能を持つ本作の主人公たちだが、元は地球で暮らしていた人間である。

さぞかし力を使ってやりたい放題していたかと思いきや、そこは人間の性、当然のように異端視され、疎まれてきた過去を持つ。彼らが「箱庭」からの召喚に応じたのも、まだ見ぬ世界を求めて、という面もあるが、この過去が影響を与えているのは作中でも認められている通りである。

この、人間社会で生きれば、異能と対になるような「影」を前提として背負っているために、それぞれの行動に説得力が生まれているように思う。

リアリティを考える上では当然と受け止められかねない要素だが、こういったある意味荒唐無稽な話に「当然」のバックグラウンドを反映させているのは素晴らしいと思う。

また、上記のように頭脳戦を繰り広げるだけあって、ある程度キャラが理性的でクレバーである。このため、キャラクターの無知や幼さに苛立つ場面は少なく、ストレスなく読める。

                                                                    • -

とにかくエンターテイメント性が高く、痛快娯楽アクション、という感じでした。やや説明に難ありとしても、スカッとする話が読みたければ一読の価値ありと思います。<評価>
親愛★★☆
無双系★★★☆
ミステリ★★★