お前は私の聖剣です 徹底的に都合をよくしたエンターテイメント

おまえは私の聖剣です。 (GA文庫)

おまえは私の聖剣です。 (GA文庫)

・平和な世界観で

IXAと呼ばれる、過去の偉人の能力を受け継いだ女の子が、暴走しながら現代に顕現する過去の偉人、「怪偉人」と戦う、という話。

ご都合的な点を挙げていけばキリがないが、エンターテイメントとしてはうまくまとまっていると思う。

この話の場合、世界観やマクロの設定を気にし始めたら負けで、ひたすらキャラに萌えたり会話を楽しんだり、関係性にほのぼのしたり熱くなったりするのが正解だろう。

そういったマクロな設定や、文章中に異常に――が多く、しかもそれがテレパシーによる会話など独自の意味をもたせてある場合と、単に間を取る場合の両方に使われていてしばしば困惑する点などを除けば、けっこう面白く読めるのではないかと思う。

そういう意味で、細かい点が気になる人や、リアリティにこだわる人には向かない。


むしろ仮にこれから真っ当な方向に進むのであれば、かなり暗い展開を覚悟しなければならないような設定である。

なぜならIXAという超人の集まりは、端的に言ってとてつもない脅威なので、問答無用で首輪をつけて条件付の生活をさせるくらいは普通で、保護という名の監視と束縛、最悪異端視されて殺されても仕方なさそうに見えるからだ。

それが当たり前のようにより集まって権力を持ち、IXA自身がトップとなる組織を作るなど、この国は大丈夫かと思わないでもない。

逆にその能力がなければ「怪偉人」に対処できず、やむを得ず譲歩しているということであれば、もっと国に対して特権など、アコギな要求をする独立したIXAの団体ができてもおかしくはない。

別にそんなあら捜しをしても仕方ないのでまとめると、要するにある意味御伽噺のような平和な世界であるということだ。「主人公とヒロインの結びつきや、周りとの関係性を描くこと」のみに焦点を絞って、そのテーマを描くことのみに集中して、それに合わせて周りを設定したらこのような形になるのではないかと思う。

それにしても、露骨なくらい狙ったエロ描写は、なんというか、需要があるのかな?本文内でネタにされているので、苦手でも飛ばせばかろうじて受け入れられる、だろう。

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評価が辛口のような気がしなくもありませんが、最後まで読みましたし、意外と最後の展開はよかったので、けっこう楽しんでました。頭をラクにして、都合のいい(これは決して悪口ではありません!『けいおん!』みたいな感じってことです)世界にしばし浸りたいときには、一考の余地ありかと思います。