珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を  香るミステリっぽさに負けずがんばって最後まで読もう

・ミステリ?と思ったが、確かにミステリだった

バリスタ・切間美星の趣味は――謎解き

京都の町で、女性バリスタ日常の謎を鮮やかに解決!珈琲好きの青年とバリスタの前に、忍び寄る闇……。

という煽り文句の本作。

こう読むと、いかにも『ビブリア古書堂の事件手帖』を思い浮かべるが、だいたいそのイメージで正しい。短編連作で小粒な日常ミステリを探偵役のヒロインが解決していくスタイルなどそのままで、流れとしてはビブリアを汲んでいるといえる。

ただし、ビブリアのように毎回の話にそれなりの謎と解決パートを期待すると、かなり肩透かしを食らう。本作は全体を通して仕組んだミステリの方がはるかに比重が大きく、ラストにどんでん返しが来るからだ。

そのため、各話の話で多少退屈な思いをしても、ひとまずさっさと読み進めることをお勧めしたい。

台詞回しもあまりにミステリの香りが強すぎて、慣れない人間には辛いかもしれない。説明口調なのはまだ許せるが、台詞回しがけっこうとんでもない。編集の方が全面的に手を入れたということだが、おそらくこの業界では情報を意図的に絞って提示するため会話、というのを暗黙の了解としているのだろう。

しかし、それを補うほどには、ラストまでたどり着くに値する本であると思う。その点ではミステリの真骨頂とも言えた。

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そんなわけで、途中でぶん投げようと思った割にはけっこう面白く読めました。

ただやはり、私のようにミステリ的なエンターテイメントにあまり関心のない人間には、本書は向いていないと思います。

まあ、タイトルからしてそう言った人間はあまり手に取らないような気もしますが。

余談ですが、文中でも書いていますが、これを読んで面白い!と思ったなら、『ビブリア古書堂の事件手帖』と『文学少女』は間違いなくお勧めできます。

特に文学少女シリーズはこの流れの原点とも言える作品で、シリーズ合わせると10巻程度と少し長いですが、間違いなく傑作と言えると思います。