豚は飛んでもただの豚? リアルすぎると違和感があるのか…
- 作者: 涼木行,白身魚
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2011/12/21
- メディア: 文庫
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・間違っていない青春ラブコメ
主人公が女の子を救済するパターンはたくさんある。
主人公が理由なく女の子に好かれるパターンもたくさんある。
ところが、主人公が女の子を好きになるパターンとなると、意外と少ない。
確かに有名どころとして、『東雲侑子シリーズ』『とらドラ!』辺りはあるが、全体からすれば少数派と言えるだろう。
本書も、表紙を一見すると3姉妹に好かれていちゃいちゃするような話を想像してしまうかもしれないが、意外とど真ん中を狙ってくるのだ。
今まで友達すらロクにいなかった主人公は、様々なできごとをきっかけとして3姉妹と知り合う。そのうち一人がどうも気になりだして…?と、実に硬派な出だしだ。
会話に少し癖があるのと、序盤の低調さが少し気になる。しかし後半からは勢いが出てくるので、そこまで頑張りたい。なお、この話は1巻では完結しないので、大賞作品だからと思うと肩透かしを食らうかもしれない。
・会話が現実に近すぎると小説では違和感を覚える
私は内容について言及する際によくリアリティという言葉を使うが、本書を読む限りやはり現実に近づければいいものではないらしい、と感じた。
当然のことなのだが、小説の会話とは現実で自分たちがする会話とは大きくかけ離れている。自分のする会話を録音して書き起こしてみれば、いかに相槌や、相手の言葉を受けての対応が多いかが分かる(と、思う)。
本書の会話は、もちろん現実の会話ほどではないが、かなり相手の言葉を受けて、まず相槌を入れてから展開することが非常に多い。そうすると不思議なことに、現実では違和感のない会話が小説だと1テンポ遅く感じるのだ。
これは我ながら少し理不尽な言いがかりという気もするが、読みづらかったのは確かだ。
・ラブコメで主人公がヒロインを好きになる率が低い理由
これは実にシンプルで、単純に主人公にかかる負荷が大きいからだろう。
恋愛でやきもきさせられる側というのは、相手に承認されるかわからない不安や、その承認が本物であるか確かめようのない不安などによって、常に負荷をかけられた状態に置かれる。
ライトノベルというのは基本的には負荷を軽減する方向に軸が動いていくので、ただ理由もなくヒロインから愛されるタイプや、いっそ明確にヒロインを救済してしまってきちんとフラグの立つ(ついでに自己拡大欲求も満たせる)タイプの方が必然的に多くなるのだろう。
なぜライトノベルが負荷を軽減する方向に軸が動くかは一つの理由ではなさそうだが、ライトノベルとの親和性や、努力や成長への不信辺りがメジャーな理由だと思われる。
そろそろくどいかもしれないが、この形式を極限まで追い詰めると『けいおん!』や『らき☆すた』に行きつくと考えている。
そういう意味では、本書はとても古典的かつ王道な筋書きと言ってよいかもしれない。
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本当に序盤は投げ出しそうだったのですが、盛り上がってきてからは結構楽しめました。通り一遍ではないラブコメとして、表紙買いもありなんじゃないでしょうか。<評価>
ビルドゥングス・ロマン★★★
純愛★★★