Let it BEE! そつない古きよきスポ根
- 作者: 末羽瑛,Tea
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2011/08/10
- メディア: 文庫
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※2節目以降ネタバレ
・短所を長所に
先端恐怖症の主人公が、突き出された剣を思わず弾いてしまったことでフェンシング部に入部することに。
トラウマと闘いながら、徐々にフェンシングの面白さや仲間と頑張る楽しさに目覚めていく過程を描いていく。
設定から展開からどことなく突っ込みたくなる香りが漂うものの、全体としては程よくまとまっていると思う。随所に織り込まれる特訓が何とも古典的で、まさに古き良きスポ根という印象だった。
突っ込みどころというのは要するに、先端恐怖症だからと言って恐ろしい速度で迫る剣を正確に弾けるものかとか、特訓からそんな素直に必要なものを吸収できるかといった部分である。しかし「そういうものだ」と言われればとくに否定する根拠もない。
それでも若干トラウマの扱いがぬるいような気もするが、そこはライトなものと割り切った方がいいかもしれない。
・スポ根はどうやったら頑張れるかを描き出す物語
本書においては割と顕著だが、スポ根というのはつまるところ、「どうやったら頑張れるのか?」を物語として提供する試みでもある。
人はこのご時世、大抵はある程度頑張らないと生きていけない。けど頑張るのはつらい。もちろんある程度は楽しいとしても、ものすごい頑張るのはやはり辛い。
スポ根はそもそも根性から来ているわけで、どこかで根性を出して努力することになる。そのモチベーションの物語を読者に提供するわけだ。
例えば本書では、それは仲間の期待であり、応援であり、思いやりだ。それらが主人公を励まし、努力や頑張りへと駆り立てる。この点は非常に意識して描かれており、部活に入る前に期待されたことで悩むシーンがあるし、父親の動機もそうだし、それは直接ラストへとつながっている。
ここからは私見だが、この視点でスポ根を見回すと、最終的に3つの要素に還元できると思っている。
それは「外からの動機付け」「それ自体を楽しむこと」「それについて自発的な動機を持つこと」だ。
「外からの動機づけ」というのはまさに前述のようなもののことだ。または「好きな女の子にいいところを見せたい」なんかでもいい。とにかく他人からの何かによって引き起こされる動機だ。
二つ目の「それ自体を楽しむこと」は、本書で言えば途中で結恵がフェンシングや、その特訓が楽しくなってくる辺りが該当する。勝つという結果や目標ではなく、「現在行っていること」を楽しみながら行うことだ。
最後の「それについて自発的な動機を持つこと」というのは、何がしか、自分で明確に「自分のために」目的を持つことだ。これは自分で自分の行動に責任を持つために必須なので、特定の行動にあてはまるわけではないが、やはりこれを意識するシーンがある。本書では少し明確に表しづらいが、ラスト前で表彰台を誓う辺りが該当するだろう。
私は要するに、人が頑張るためにはこの3要素が必要ですよ、という意味だと思っている。それぞれの要素が、どのように描かれている?という風に意識してスポ根を眺めると、もしかしたら自分に照らしてすごい役に立つ、かもしれない。
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気が付いたらフレームワークみたいな話になっていましたが、いいことにしといてください。<評価>
親愛★★☆
ビルドゥングス・ロマン★★★
テーマ★★☆