豚は飛んでもただの豚?2 主人公の決断と一緒に考えたい
- 作者: 涼木行,白身魚
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2012/03/22
- メディア: 文庫
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※2節目以降ネタバレ
・会話も自然になり、盛り上がってくる2巻
おおむね感想としては1巻の時に言ったことと変わらない。
ただし、会話については2巻になってかなり自然に読めるようになっているので、いいところが残った形だ。
話としても、キャラの関係が深まるにつれ、どんどん面白味が増してくる。作者の方の「尻上がりに面白くなる…はず」という言葉は伊達ではないと思う。
概要について追加することは少ないので、今回は物語中盤で出てきた主人公の葛藤について少し触れたい。
・その主人公の決断は正しいか
ボクシングというアイデンティティを失うことはできない。けれどそれ以外のことにも惹かれている自分がいる。そのせいでボクシングに割く時間や、モチベーションが減ってしまっている。
ボクシングを得るためには、ほかのすべてを捨てるべきなのか?
まあこんな大きな決断を高校1年の段階で迫られる人間なんてあまりいないと思いますが、誰しも決断はあるもの。考えてみるに越したことはない。
今回の場合、考えることは主に次の二つだろう。
一つには、ボクシングの上達を目指す場合に、何がベストな選択か。
もう一つは、トータルに人生で見た場合に、どちらを取るべきか。
ボクシングに限らず、なんでもあてはまると思うが、費やしたリソースが多い方が一般的には有利だろう。ゆえに、主人公のボクシングに専念する考え方が的外れとは思わない。
ただし人間は、一度取り組むと決めたら常にベストなパフォーマンスで死ぬまで取り組み続けることができるわけではない。
確かに、一つのことにすべてを賭けることによってその分野で成功したような人は少なからずいるだろうが、回り道をして成功した人も劣らずたくさんいる。
この意味で、どちらがより「良い」選択肢かは、この時点で見通すことはできない。
次に、トータルで見た場合だ。例えばボクシングにすべてを費やして、成功するならいいが、別に成功しない可能性だって十分にある。けがで選手生命が絶たれることもあるだろう。
その場合、ボクシングにリソースを割いた代償として、その他の点で後れを取っていることは十分に考えらる。それは例えば学歴であったり、実践的な技能であったりする。
しかし一方で、ボクシングを集中して取り組むことで、一つのことに取り組む方法論を恐らく確立することができる。それは他分野にも十分応用の効くことで、その集中力や、メソッドは役に立つ可能性は高い。
よって、それぞれの観点から見たとして、この決断の正当性を支えることはできない、ということになる。
ならば何によって決断すればいいのか。
これは結局、自分が納得できるかどうかで判断するしかないだろう。自分で責任を持つためだ。
大体人生における決断の責任なんて取る方法は絶対にないのだから、人の言い分やチンケな理論なんてアテにして結論を出していいわけがない。その決断によって導かれた結論の責任は絶対に取らなくてはならないのだ。
成功の法則なんて、世間では一山いくらでささやかれているが、それに従ったからって自分が「成功するか」(そもそもなんについてだよ…と言いたくなる)なんて全く保障されない。
もちろん、納得する決断を下すために、調べうる限りの情報を調べて、決断のための要素を増やすことは必要だろう。しかしその決断は自分のものでなければならない。
本書の話に戻ると、本書においては、集中しようとする主人公を、三女が、それは逃げだ!と喝破する。
これはその選択自体が間違いなのではなく、主人公がそれを本心では望んでいないにも関わらず、あいまいな理論にすがって決断しようとしていたからだろう。
こういうやり取りを見ていると、本書はやはりいい話だな、と思う。
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最近紹介しても本編と関係のない話ばかりしているような気がしますが、何かあったんでしょうか。我ながら。別に何もありませんけど……。