ライトノベルスポ根の主人公は男がいいか?女がいいか?

あまりにも長く、かつ関係のない話になってしまったので分離した。

本書『かもめ高校バドミントン部の混乱』を読んで思ったのは、ラノベでスポ根をやるなら主人公は男がいいか?女がいいか?ということだ。


・萌えはなかった『暴風ガールズファイト

というのも、先に挙げた『暴風ガールズファイト』は、かなりの良作であるにも関わらず2巻で打ち切られてしまったのだ。この仕打ちに憤った読者は私だけではないはずだ。

ただ、編集部のろくでもない売り方にも問題があったらしいが、やはり「萌え」が入り込みづらい構造で敷居が高かったのは否めないのかもしれない、とも思う。

小説は3人称であれ、基本的には誰かの視点から見ることになる。そうすると、漫画やアニメのように登場人物を外側から眺めることはできず、誰かの主観を通して観察するしかない。

すると、読者が「萌え」つまり登場人物に幻想を抱くためには、その視点は女性に対する萌えなら男性からの視点、もしくはそれに準ずるものでなければならない。しかし『暴風ガールズファイト』は、主人公も女子であるのに作者も女性であるため、その視点が存在しないのだ。ゆえに作中に「萌え」を取り入れることができず、敷居が高くなったのではないだろうか。


・挿絵及び女性の登場人物に男性的な視点を混ぜた『アイドライジング』

『アイドライジング』などは、女ばかりでも萌え要素を備えている、という反論があるかもしれない(ゆえにスポ根とは言い切れないのだが…)。

これは一つは挿絵で賄っているのと、作者が男性なので(多分)、登場人物が女でありながら、その視点に男の視点を混ぜることによって賄っている…ような気がする。少し百合っぽい雰囲気はそのために出しているか、逆にそれをすることで自然に出ているということだろう。

また、この方法で描き切った傑作が『銀盤カレイドスコープ』だと考えている。


・ハーレム重視にシフトした『ロウきゅーぶ!

だいぶ話がそれたが、要するにスポーツものをやろうとすると、主人公を男にすると周りが男ばかりになってしまうが、女比率を増やすために主人公を女にすると萌えを作る視点が消失してしまうのが問題と言える。

これをうまく解決しているように感じたのは『ロウきゅーぶ!』の一巻だが、あれも2巻以降はハーレムものになってしまった。ハーレム側に引っ張る力が強かったのだろう。

この作品の解決方法としては、主人公は男子なのだが、女子の部活を受け持つ、という形だった。しかしこの形では、主体となる主人公は大して頑張らない、という羽目に陥る。そのためスポ根の形式を長期的に続けることができないのかもしれない。


・再び『かもめ高校』

ようやく『かもめ高校』の話に戻ってくるが、主人公が男で、普通に部活に所属するならどうか?ということだ。

スポ根としては申し分ないが、やはり萌え要素は極端に少ない。しかしないとは言えない部分に希望を感じる。

本書では途中で女子部員にバドミントンを教えるシーンがあるのだが、このあたりに片鱗が見える。少なくとも男を主人公として据える分には、女子が十分に登場すれば不可能ではないのだろう。

根本的な問題として、スポ根と萌えが同時には存在しえない要素であることは否めないのだが、物語上で両立させることは不可能ではないように思える。

そういう意味では、萌え要素はあまりないが、なんの違和感もなしに男女が混合でスポ根をしている『ちはやふる』のように、男女混合の競技を中心に据えることで解決できるかもしれない。

あまりに長くなったのでまとめると、ライトノベルでスポ根を描ける可能性としては、

・女子が主人公だが、挿絵と、作者等が何らかの男性的な視点を取り入れることで萌え要素をカバーする
・男子を主人公にして、女子をたくさん登場させる構造にする。例えば男女混合の競技であるとか、女子部の中に男子が混ざるとか

というところだろうか。

私としてはこんな浅い考えをぶち破ってくれる作品に期待しないでもないが、次にヒットするスポ根がこの辺だったら嬉しくないでもない。