シークレットゲーム キラークイーン

健速さんの本気。全編クリアで約20時間、一気に駆け抜けた…

バトロワ的なサバイバルゲームものとして、なかなかこれ以上はなさそうな出来。

燃えた…燃え尽きた。


全部で4周からなるこの作品、キラークイーン時代はどうだったのか分からないけど今回は相当うまく、周回プレイする「ゲーム」という特性を利用できていると思う。作中のゲームのことではなく、メディア的な意味で。

1周目では、ヒロインしか救えない。基本的にゲームの暴力に晒され続け、そのルールからも出られない。

2週目になっても、ヒロインしか救えないが、初めて首輪を暴力で外す、というルール外の行為が成立する。

3周目になると、渚以外にも文香、かりんも救え、かつゲームの枠を破ることに成功するが、まだ「ゲームを操るボスを倒す」というゲーム主催側の意図からは出られない。

まず巧妙だと思ったのは、ルールが全員が全員の殺し合いでもなければ、うまくやれば全員生きて帰れるものでもないということ。

全員が全員の殺し合いとなると、このルールは強力すぎで協力することがまず出来ず、ゲーム自体を破ることも当然出来ない。逆に後者ならうまくやって全員生きて帰ればいいだけになってしまう。

ルールに従ったこの3周で嫌というほど、このこのゲームに従っていてはグッドエンドに到達できない、ということをプレイヤーは思い知らされる。

そもそも1周目で救われた咲実が2,3周目ではかなり無残に殺されてしまうので、とても納得のエンドにはなりえないし、1周目や2週目は、麗華やかりんなどが悲しい死に方をしてしまうので、同じく納得しえない。

また、この3周ではヒロイン達はそれぞれ救済されるけれども、主人公は救済されない。

よって最後の4週目には、それらを全て納得させるようなエンドが求められる。

ここでさらに巧みなのは、1から3周目でキャラやPDAの情報が分かっているので、膨大な情報が必要かに見える4周目がヒロインが協力的になるのなんかはほぼ情報なしでプレイヤーもさっくり納得できるところ。

その展開を可能にしたのが優希だけど、1〜3周目で全く登場しなかったのは、組織に回収されてしまっていたからか、はたまたどこかで死亡していたからか…ちょっとその辺は詰めてみてないですが。

咲実は弱いから生き残れなかったけど、優希=自分より弱いもののおかげで、気を強く持てるようになった。かりんは妹のために他人を排斥して信用しないつもりだったが、優希+総一=無害な存在として、また資金の確保先として戦う必要が発生しなかった。麗華や葉月の信用も同様に勝ち得た。

そして咲実=優希の外見を持つ少女+優希=同じ名前を持つ少女の二人によって、主人公の弱さが暴かれ、真の救済へ導かれる。

強いて言えば、「エース」と優希の存在が多少唐突というか後出しだった感はあるけど、バックグラウンドも十分と言えるのでは。

ついでに言えば、手塚と高山の奇妙な信頼関係もまた面白いし、この4周目はもう戦慄。

あんな弱弱しかった咲実が…主人公の闇を暴き出して突きつけるまでに至るなんて!

荒唐無稽、ご都合主義になりかねない4周目を、これだけ説得力を持って書ききってくるなんて、本当にとんでもない…。

多少、論理的すぎたり説明的だったりした点は否めないけど、それを補って余りある名作だと思う。大変面白かった。