偽りのドラグーンⅤ 二部まだー…?

偽りのドラグーン (電撃文庫)

偽りのドラグーン (電撃文庫)

偽りのドラグーン 5 (電撃文庫 み 6-28)

偽りのドラグーン 5 (電撃文庫 み 6-28)

※2節目以降ネタバレ

・亡国の王子ジャンの成長物語

よくも悪くも『ビブリア古書堂の事件手帖』で一躍有名になった三上氏の作品。一方本作は竜と人が共存する異世界で少年の成長と戦争を描くファンタジーだ。

亡国の王子としての身分を隠し、孤児院で暮らしていたジャンは、身分を兄のヴィクトルと偽り竜騎士を養成する学園に入学する所から物語は始まる。目的は祖国を滅ぼしたレガリオン帝国への復讐だ。

1〜3巻辺りは、成長物語としてよくまとまってはいるものの、主人公が最初あまりに幼いのでなかなか話が進まない。本格的に面白くなってくるのは4巻から、というところなので、読むならぜひそこまで読み進めてほしい。

ただ、伏線は一応回収したし、キャラの関係性にも一通り決着がついて終わるのだが、少し不完全燃焼に見えなくもない。多分、この世界が今後どのように進んでいくのかが気になるからだろう。そんな気分になるあたり、やはり面白かったのだと思う。


・闘争に正義なく、それでも人に正義あり

今回はジャンの立場から描かれているため、ユニオンが正義でレガリオンが悪のようだが、恐らくどちらとも言えない。もちろん、レガリオンの掲げる大義が正義というわけではもちろんないが、過去に行ったであろうユニオンの迫害及び侵略(たぶん)が帳消しになるわけでもない。

それぞれの立場があって、そこから正しさというのはそれぞれの形になるのだろう。身近な人間のために祖国に剣を向けたクリス、己の顕示欲のために貴重な戦力を殺そうとしたアダマス、必要以上に殺すことを拒んだティアナ、パラダイムのシフトを願ったヴィクトルやグロリア。

善し悪しがあるわけではないが、そういうものであるという事実は理解しておく必要があるような気はする。

ただし問題はその先、どのような理想を描くべきかであると思う。2部が見たかったのは、仮に2部をやるとするなら、ジャンが今後どのような形を描いていくのかがテーマになったはずだからだ。

一つ例を挙げると、今アニメ化している『まおゆう』は同じような試みをしているように思える。「あの丘の向こう」とはそういうことではないだろうか。

まあ、答えがあるなら世界はとっくに平和になっているはずなので、「それを考えること」その試み自体の重要さを忘れない方がさしあたっては必要なのかもしれない。

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なにかもう少し構造などの方に見るべきポイントがあったような気がしないでもないのですが、現状言葉にできていません。ストーリーとして自然に流れていると切り取るのが難しいですね……